第3話
案内してもらっているここはかなり広い。
庭園には池があり、中で鯉がうようよ漂っているし、明らかにシャバのものでは無い顔した男が麻雀をしている。
「私、生きて帰れんのかな……」
「まーそこはあんた次第かな?お嬢の逆鱗に触れたりしなけりゃ早々やられたりしねーよ」
トストスと赤石と呼ばれる男の後ろを歩くと軽く背中に衝突してしまう。
「ちょっといきなり止まんないで……!?」
立ち止まり前を向けばある人物が目に入る。
茶色のロングヘアに緑のインナーカラー、高身長で切れ長な瞳の彼女を彩華は知っていた。
「も、モデルのニーナじゃない!!」
「ん?なんだ赤石、新人連れてきたの?」
「ああ、お嬢のスカウトでな。ニナもお嬢に呼ばれてんだろ?」
平然と喋っているのが信じられない。モデルのニーナこと蝶野(ちょうの)ニナはその整った顔立ちとスタイルに冷酷な性格に感じて役立ちにそなわっている。
「あんた名前は?」
「え?皇彩華(すめらぎあやか)、です」
同い年と分かっていてもその浮世離れした彼女に対して敬語を使ってしまう。
「へぇなかなかいい人材なんじゃない?あとはお嬢次第だね」
「そうだなーお嬢がどう行動するかわかんねぇし不安材料しかないけど」
今度は蝶野も一緒に歩き始める。
お嬢というのは恐らく昨日今日と会ったツインテールの少女のことだろう。そんなに偉いのか、見た限りではそんな風には見えなかったが……。
「着いたぜ、一応失礼のないようにな」
開かれた扉の先には何人かの強面の人達の真ん中で先程の『お嬢』と呼ばれていた少女が足を組んでこちらを見据えている。その横には同い年くらいの少女もいる。
「やあやあ!よく来てくれたね皇彩華ちゃん!」
場の空気に馴染まぬ明るい声はより異彩を放つ。後ろにあった扉は閉じられ、逃げることは許されないようだった。
「……なんか用なのかな、私あんたらに連れてこられたせいで家に連絡できてないんだよね。早く解放してくれない?」
本当は連絡なんてしなくても心配もされてないと分かっているが、解放されるにはこれが最善と考える彩華。
だが、目の前の少女は突然笑いだしお腹を抱える。
「ふふ、あはは!そんなこと僕の方からしといたし君のお家は今日からここになるんだから気にしなくていいよ!」
「は?」
意味が分からない、私の家がここになる?一体少女は何を言っているんだ。
「あ!そうそう、自己紹介が遅れたね。僕は黒紅真宵(くろべにまよい)……黒紅組の組長だよ」
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