第4話 狙うは秋田剣

「グンジュンサが倒されたのか…。無念…。」

 仙北郡神グンニテコは俯いて言う。

「これでわらわたちは残り4人、『秋田らしい水稲のファーマーズ』と同じ人数になったわね。」

 雄勝郡神グンコマチは片耳にヘッドホンをして音楽を聴きながら呟く。

「秋田らしい水稲のファーマーズ?それ何だべ?」

 南秋田郡神グンハチロウはグンコマチに問う。

「今人間の間で流行っている歌手のグループよ。」

「そんたなあるなが。人間も妙だいんたやづ好ぎだな。」

 グンハチロウは言う。

「郡神が人間の音楽を聴くなど言語道断!」

 北秋田郡神グンチドリはグンコマチのヘッドホンを奪い取り、それを木端微塵に破壊した。

「ちょっとあんた、何すんのよ!」

「お前には危機感が足りない。もともと6人いた我々もグンナンブが倒され、そしてグンジュンサまでもがやられてしまった。我々が思っているよりシノクニクスの力は増大している。舐めてかかれば2人と同じ末路を辿ることとなるのだ。」

 グンチドリは語る。

「グンチドリ殿は何か作戦があるので御座るか?」

 グンニテコは問う。

「ああ、人間に化けて秋田剣を持つ人間と接触し、剣を奪う。そして秋田剣を操り、この秋田県を滅ぼす。」

「人間さ化けるってどうやってやるなだ?」

 グンハチロウは言う。

「お見せしよう。」

 グンチドリは羽織っていたローブを頭から被ると、人間の姿となった。

「確かに、どこからどう見ても人間であるな!」

 まるで手品のような早着替えに感心するグンニテコ。

「では行ってくる。」

 グンチドリは姿を消した。

「行っちゃったわね。生きて帰ってこれるかしら?」

 グンコマチは呟く。

「グンチドリを信じるしかねな。そういえばよ、なしてシノクニクスはおらだ郡神を倒せるんだべ?」

 グンハチロウはグンニテコに問う。

「拙者たちと同じように、奴も2000年の間に進化しているのではなかろうか?嘗ては封印するのが精一杯だったが、今は意図も容易く倒している。油断は禁物で御座るな。」

 グンニテコは言う。


 一方、超常現象サークルの一行は鹿角市花輪で現地調査を始めた。

「まず周りに痕跡が残っていないか、確認ね。」

 リーダー・辰美澪はメンバーの稲手天と氷森豪樹に指示をする。

「了解であります!さあ探すぞ!」

 天は周りをうろうろして痕跡が無いか探す。豪樹も天に続いて探し始める。暫くして豪樹が言う。

「辰美先輩、痕跡は無さそうですよ。」

「だったら地元の人に聞いてみるというのも手ね。目撃証言があるかもしれないし。」

 澪は近くを歩いていた20代後半くらいの見た目の若い女性に話を聞く。

「すいません、こちらで先日謎の鎧の戦士が目撃されたらしいんですが何か知りませんか?」

「あー、aXで話題になってるやつですよね。でもあれフェイクじゃないんですか?」

「画像に捏造された痕跡はありませんでした。間違いなくいるんです。他に見たという方は?」

「すいません、私の職場でこの話をしたのですが全員フェイクだと言っていて。私の周りでは誰も見た人はいないんです。」

「そうなんですね…。ありがとうございます。」

 少し落ち込む澪。

「やっぱりフェイクなのかな…。」

「弱気だな辰美。いると信じるんじゃないのか?」

 顧問・八橋湧作は澪に言う。

「そうですよね、リーダーの私がこんな調子じゃダメですよね。」

「そうだその意気だ。さて、聞き込み続けるぞ。」

 湧作に押され、澪は天、豪樹と共に聞き込みを続けた。しかし目撃証言は得られなかった。

「うーん、なかなか進まないですなあ。」

「稲手先輩、何食べているんですか…。食べながら話さないでください!というかどこで買ってきたんですか!辰美先輩も八橋先生も聞き込み頑張っているんですよ!」

「あーめんごめんご。お腹空いちゃってね~。そこでみそたんぽ売ってたから。」

 天はみそたんぽを食べながら答える。

「もう1時半か、とっくにお昼過ぎてるな。皆、遅めの昼食にはなるがどうだ?」

 湧作は3人に言う。

「先生、ナイスっす!いやー、朝から飲まず食わずでお腹ペコペコですよー。」

「稲手、お前みそたんぽ食ってるだろ。」

 冷静に突っ込む湧作。

「お昼なら私抜きで食べてきてください。」

 澪は湧作に言う。

「辰美、腹減ってないのか?」

 湧作は澪に問う。

「えー!ミオミオも一緒に行こうよ!」

 天は澪の腕を掴む。

「ありがとう。でも私はもうちょっと調べたいんだ。」

 澪は笑顔で言う。

「流石リーダー、熱心ね。」

 天は感心している。その時豪樹がスマホでとある情報をSNS・aXにて目にする。

「能代で謎の鎧の戦士とクマの怪物が交戦しているらしいです!」

「え!それは本当なの?」

 澪は豪樹のスマホを覗く。そこには鮮明に鎧の戦士・シノクニクスとクマの怪物・ベアーソルジャーが映っていた。

「これは…。」

 驚きのあまり言葉を失う澪。

「今から行っても鎧の戦士が戦っているところに間に合わないとは思いますが、現地に行けば何かしらの痕跡を見つけることは出来るんじゃないでしょうか?」

「確かに。先生、能代までお願い出来ますか?」

 豪樹の提案に乗る澪、そして湧作に頼み込む。

「分かった、行くぞ。」

 湧作たちご一行は能代市に向けて鹿角市から出発した。


 少しだけ時間を遡り、能代市では雄代海十が平和に海釣りをしていた。

「うーん、今日は全然釣れないな…。」

 海十は退屈そうに呟いた。

「まあそういうこともある。海十、ポイントを変えてみたらどうだ?」

 退屈そうな呟きに反応する秋田剣。

「いや、もう少し頑張ってみるよ。」

 海十は気合いを入れ直して釣竿を握る。すると、海十の元へ1人の男性が走ってきた。

「た、助けてくれー!」

「どうかされたんですか?」

 釣りを止め、その男性の元へ駆け寄る海十。

「か、怪物が…。」

 震えながら答える男性。

「怪物!?」

 その時、海十の目の前にベアーソルジャーの大群が現れた。

「秋田剣、こいつらも郡神か?」

 海十は問う。

「違う。だが、奴らから郡神と同じような力を感じる。」

「いずれにせよ敵ってことか、行くぞ!」

 海十は秋田剣の刀身にアクアコスイシノクニカードをかざす。

『Blue,Aquakosui!』

 秋田剣から音声が流れ、海十はシノクニクス アクアコスイに変身する。同時に片手剣モードの秋田剣は大剣モードに変化した。

「ウオオオオ…!」

 雄叫びを上げながら襲い掛かるベアーソルジャーの大群。

「やってやるぞ、はああ!」

 アクアコスイは大剣を振るってベアーソルジャーを次々と薙ぎ倒していく。

「やはり凄い…。」

 アクアコスイの戦いを見ながらそう呟く男性。

『Aquakosui,finish charge』

 アクアコスイが秋田剣の刀身に再びカードをかざすと必殺技待機状態に移行し、音声が流れる。

「これで決める!シノクニディバイド!」

 秋田剣を一振りでベアーソルジャーを全滅させたアクアコスイ。変身を解除して海十の姿に戻る。

「怪我はありませんでしたか?」

 海十は近くにいたその男性に声をかける。

「ああ、何とか。」

「良かった。」

 優しく微笑む海十、そしてそれを見つめる男性。

「ちょっと君!」

 男性は立ち去ろうとしていた海十を引き留める。

「どうかしましたか?」

「その剣凄いね。ちょっと見せてくれるか?」

「良いですよ、どうぞ。」

 海十はその男性に秋田剣を渡す。

「ありがとう。しかしよく出来てるねこれ。」

「そうなんですよ、しかも喋るんですよ!」

「フッフッフ…。」

 突然男性の口調が変わる。

「お前がバカで助かったよ、フン!」

 男性は海十を押し倒す。

「うわっ、急に何するんですか!」

 海十は尻もちをついて言う。

「お前、郡神だな?」

 秋田剣は男性に言う。

「その通り、だがもう遅い。お前は我のものだ!」

 男性が手にした秋田剣は邪悪なエネルギーに包まれる。

「うっ、こ…これ…は…。」

 秋田剣の意識が遠のいていく。

「秋田剣!」

 海十は秋田剣を取り戻そうと叫ぶ。

「これは我、北秋田郡神グンチドリのものとなった。さらばだ!」

 男性の正体は人間態となったグンチドリだった。

「待て!」

 海十の想いは届かず、グンチドリは姿を消した。

「待ってろ、俺が取り戻してみせる!」

 海十は強く誓った。


《この話の登場人物》

・辰美澪

・稲手天

・氷森豪樹

・八橋湧作

・雄代海十

・秋田剣

・北秋田郡神グンチドリ

・仙北郡神グンニテコ

・雄勝郡神グンコマチ

・南秋田郡神グンハチロウ

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秋田剣・継承之刃 けいティー @keity-akitanowarashi

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