EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)26

クライングフリーマン

誰が為の『婚姻届』

 ======= この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

 横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。大阪府警テロ対策室に移動。

 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

 幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

 花菱綾人所員・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の刑事。

 倉持悦司所員・・・南部興信所所員。

 横山鞭撻所員・・・南部興信所所員。元大阪府警刑事。

 佐々一郎・・・大阪府警テロ対策本部所属。定年退職して南部興信所に転職した横山元警部補の後任として、EITO連絡係をしている。

 幸田(月山)澄子・・・飲み屋の女将。幸田所員と結婚した。

 大文字伝子・・・総子の従姉。EITO東京本部エマージェンシーガールズ隊長。

 本郷隼人・・・EITO東京本部システム部。弥生の弟。

 友田知子・・・南部家の家政婦。芦屋グループ社員。


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 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


 午前10時。大阪市東住吉区。

 南部興信所の倉持所員と花菱社員は、依頼者の寿悦夫と共に、とあるアパートに赴いていた。寿は、ストーカーを繰り返す元同僚の女性に直談判に来たのだ。

 ノックをしても開かないので、花菱はドアを開けた。

 そこには、床に突っ伏した女がいた。果物ナイフが背中に刺さっている。

 一目見て殺人と判断した花菱は言った。「アカン。倉持君。警察に電話。ああ、所長にもな。」

「了解です。」倉持は廊下に出て。ドアが見える位置から110番と、南部興信所に電話をした。寿は、呆然として、ドア付近に立っている。花菱は、素早く死体と部屋を確認し、スマホで撮影をした。

 間もなく、東住吉区署の機動隊の篠田警部補と松屋警部が、そして、鑑識が到着した。

 花菱は、名刺を出し、依頼内容を話した。

 午前11時。東住吉区署。取調室。

 松屋警部が出てきた。「ほな、行って来ますわ。」

 花菱と倉持が廊下にいるのを見て、「興信所の探偵さんは、もう話聞いたさかい、帰ってええで。」と松屋は言った。

「依頼人の寿さんを放って帰れませんがな。」花菱の言葉に、「はあ?当分帰られへんがナア、犯人やのに。」捨て台詞を吐いて松屋は去って行った。

 後から出てきた篠田に花菱は尋ねた。「どういうことです?」

「逮捕令状、家宅捜索令状を取りに行くそうです。救いようがない若者やな。」

 花菱は周囲を見てから、篠田と倉持を連れて取調室に入った。

「寿さん。自白したんでっか?」「はあ。『殺してやりたいと思ったか?』って言うから、そうですね、って言ったら出て行かれました。」

「昔の刑事ドラマみたいですね、花菱さん。」「ああ。幸田はんやったら、確実喧嘩やな。」

 遡って、午前11時。東住吉区区役所。女子職員ロッカー室。

 南部興信所の所長南部寅次郎と、横山所員は、これまた死体と遭遇していた。

 女子職員が血相を変えて、区長室に飛び込んだ。

 たまたま、他の用事で来ていた南部と横山は、「死体が」という女子職員の言葉を聞き逃さなかった。

 女子職員と区長が走って行った先は、女子職員ロッカー室とプレートがあったが、迷わず2人は入って行ったら、死体と遭遇した。背中にはナイフが刺さっている。

「区長。現場保存が大事です、一旦出ましょう。あ、警察呼ばんと。」と言いながら、南部は区長と女子職員を外に連れ出した。

 南部が目配せをしたので、横山は、ざっと死体とロッカー、窓を検分した。

 南部は区長と旧知で、南部の説諭で落ち着きを取り戻した。

 警察と鑑識がやって来た。通り過ぎる鑑識の中から、南部は旧知の蔵前を見付けて囁いた。「ワシと横ヤンが発見しました。」

 蔵前は、頷いて、現場に向かった。区長は、適当な口実を設けて、管内放送で、区役所利用者に落ち着くように、と放送をした。

 女子職員は、刑事に話を聞かれているようだ。

 南部は、横山と駐車場に移動した。

 30分後。現場検証を抜け出した、蔵前が検分を手短に教えてくれた。

 事件の前にチラシを係に渡してあったので、2人はまっすぐに興信所に帰ることにした。彼らは、介護施設から行方不明になった人の目撃情報提供を呼びかかるチラシを持ってきていたのだ。

 正午。南部興信所。

 女子事務員がインフルエンザで休みを取ったので、南部家の家政婦友田知子が、事務を手伝っていた。

 昼食は、知子が作ったハヤシライスだった。

 ハヤシライスを頬張りながら、南部は言った。

「蔵前さんの話によると、花ヤンと倉持が発見した、寿さんのストーカーとワシらが発見した・・・あ、発見は区役所の人か。ま、ええわ。区役所のロッカーに倒れてた職員のナイフは、いずれも同じ刃渡りのサバイバルナイフや。しかも、左腕の腕時計の部分に『焼き印』みたいなもんがあったらしい。」

「所長。ヤクザが絡んでいるんですか?」「反社か。どちらかと言うと、半グレの方やな。」

「いち、かな?アイ、かな?」と横山が言うと、「横ヤン、いち、やったら、次はニ、やで。」「同じ焼き印・・・あ、秘密結社かも。あ・・・すみません。」

「ええよ、ええよ、知チャン、身内同然やから。まあ、意味は犯人に聞くしかないわな。午後から、死んだ2人の共通点探してくれ。寿さんも、すぐに釈放して貰えるやろ。今、本庄先生が接見に行ってる。」

「ああ。それと、松屋警部のこと、小柳さんに頼んでみるわ。気になんねやろ?花ヤン。」「ええ。同じ年代やったら、噂くらい聞いてたかも知れんけど・・・今時ちょっと珍しいわ、あのタイプ。倉持君が言った通り、刑事ドラマ見過ぎちゃうかな?」

 午後3時。

 事務所の電話が鳴った。知子が出て、「旦那さん、あ・・・所長。大前さんから電話です。」と言った。

「繋いで。」知子は、社内電話の転送ボタンを押した。

「はい。はい・・・はい。そうですか。」電話を切った南部は言った。

「今、監査入ってるらしい。変な金の動きがあるそうや。小柳さんから、『ついでに伝えといてくれって言われた』って、ついでかーーーい!!」

「所長、電話に突っ込んでも、聞こえませんけど。」「知ってる。」

 そこへ、出掛けていた、横山、花菱、倉持が帰ってきた。

「所長。目撃者が出ました。生活保護受けてる人やけど、申請した後、あのストーカー女を見かけたそうです。婚姻届を出したらしいけど、確認印、何もないのに提出して、職員は受理したそうです。『判子レス』とかいう言葉が流行っているから、その口かな?と思ったそうです。その受理したのが、念の為確認したら、区役所職員日置俊郎でした。」

「偶然とは思いにくいな。よし、花ヤン、小柳警視正に報告や。」

 午後4時。EITO大阪支部。司令室。

「すると、申請した人間と受理した人間が被害者?松屋警部は、寿氏が両方の犯人やと?警視正。指紋は?」と、大前はディスプレイの小柳警視正に向かって言った。

「ない。定番通り、拭き取ってある。だが、サバイバルナイフの出所がすぐ分かった。龍の絵が描いてあるんだが、下手くそでね。かえって特徴になっている。三島商会という半グレの会社がある。ヤミ金をやっていて、ヤクもやっているという噂があるが、証拠を掴めていない。公安もマトリもマークしていた会社だが、これで動き易くなった。『殺害された顧客の情報』だからな。無論、一般の刃店やホームセンターでは取り扱っていない。今、佐々ヤンを真壁と向かわせた。松屋の見張りも兼ねてな。あ、そうだ。このナイフだが、人力ではないかも知れないと鑑識は言っている。肝臓のピンポイントに刺さっているらしい。」

 午後5時。

 大前が書類を書いていると、ヘレンが「コマンダー。小柳警視正からです。」と言った。

「繋いでくれ。」ディスプレイに小柳警視正が映った。

「大前君。三島商会が、どこやらと午後7時に取引する、と『タレコミ』があった。EITOエンジェルズを出動させてくれ。」「了解しました。」

 午後7時。つくし公園。

 三島商会の社員?達がマイクロバスでやって来た。

 ついで、トラックに乗った一団がやって来た。

 三島商会の社長三島哲雄が、相手のヤクザの一団の代表らしき人物に言った。

「籾山組さん、ですか?うちのナイフを気に入って、大量に買って下さる、とか。」

「ああ。タダでな。」一団の男達30人は拳銃を取り出した。

 三島商会の社員20人も拳銃を取り出した。

「ちょっと待ったあ。」EITOエンジェルズが現れ、総子が言った。

「ん?EITOエンジェルズか?何でだ?取引の邪魔をしに来たんか?」

「何が取引や。拳銃向けられてるやないか。三島さん。あんたら、嵌められたんや。そいつら、金の入ったケース持って来てないで。」

 その時、ジュンがブーメランを投げた、ケースが開いた。施錠はしていなかったのだ。空だった。

「そのナイフ、あんたらの背中に刺す為に奪う積もりやったんや。勘違いシイなや。あんたらを助ける為やないからな。」

 EITOエンジェルズは、三島達を無視して、水流ガンでグミ弾を撃った。水流ガンとは、グミ状に変化する銃で、敵の銃火器を無効にする為に用いられる。

 無効になったのを確認して、EITOエンジェルズはバトルスティックでヤクザの一団に向かった。

 三島の部下達は加勢に入ろうとしたが、三島が押しとどめた。

 15分後。ヤクザの一団の方は、夜空を眺めていた。

 三島は、拳銃の安全装置をセットした地面に置いた。そして、両手を挙げた。

 部下達は、大人しく従った。

 ぎんは、長波ホイッスルを吹いた。どこからか、警官隊がやって来た。

「まさか、無血平定されるとはな。ひとつだけ聞いていいか。何で、偽ヤクザが来るって分かった。」

「簡単なことや。あんたらが相手する筈やった籾山組は、神戸で今ドンパチしてる。分散してここに来る余裕はない。つまり、ヤクザにはアリバイがあったんや。あんたらは、他の容疑で引っ張られる。でも、『殺し』は、やってない。それだけは褒めたるわ。」

 午後7時半。オスプレイに分乗した総子たちに緊急連絡が入った。芦屋三美が整備させた機内ディスプレイは、オスプレイ1号機、2号機、大阪府警テロ対策室、EITO大阪支部、EITO東京本部を繋いだ。マルチ画面の中央に小柳警視正が映っている。

「チーフ。よくやったな。何で反社が偽物だと分かった。」

「ニュースでやってたから。神戸の騒ぎ。ネットニュースで見た。それで、緊急って?」

「うん。逮捕連行した時、佐々ヤンにナイフの写真を送らせたんだ。すると、区役所とアパートで見つかった死体に刺さっていたナイフと違っていることが分かった。それに、変なタレコミも気になっていたんだ。チーフ。死体に刺さっていた方は台尻に穴が開いているんだよ。本部の本郷君、説明頼むよ。」

「死体のナイフは、恐らくナイフを収納してから撃つ銃で撃たれている。至近距離ならおんな子供でもかなりの殺傷能力だ。飛ばすとなれば、尚更強力な武器だ。連射はできないけどね。鑑識の蔵前さんが違和感を抱いたのは、その穴だ。」

「つまり、三島商会が利用されたというチーフの推理は間違っていない。殺された区役所職員和光真之介は三島商会と繋がっていたことは花ヤン達の調査で判明した。和光は借金が嵩み、ヤミ金でもある三島商会に借りていた。そして、あの集団『えだは会』の生き残りにそのことをネタにされ、脅かされた。和光は言われるがまま、ある任務を遂行していた。それは、戸籍係である和光が婚姻届の不正受理を行うことだった。実は、東京の区役所で、ストーカー女が勝手に出した婚姻届をうっかり受理してしまい、問題になった。婚姻届の申請は簡単で、取り消し手続きが煩雑で、という事情があるらしいが、ストーカーにつきまとわれていて、勝手に婚姻届を出された相手の男性は訴えると言っている。この話は本庄弁護士から聞いた話だが、『えだは会』は『うっかり』ではなく、『故意に』不正受理を行い、それをネタに操ることを計画した。」

 小柳警視正に継いで、伝子が発言した。

「南部さん達が発見した女矢作真由子は、『えだは会』のメンバーで、死んだ女の戸籍を乗っ取った偽者だった。その意味でも寿氏の妻になる資格はない。花菱さんの調査で『なりすまし』が判明している。問題はここからだ。さっき、レッドサマーからメッセージが送られてきた。後で確認してくれ。内容は、《大阪の事件、もう片付いたみたいだね。僕は裏切り者を、まあいいやで済まさないタイプだ。覚えておいてね。じゃ、また。レッドサマー》だった。改名したって言っておいて、変な奴だな。」

「ねえちゃん、そしたら、レッドサマーが穴開きナイフで刺した、あるいは刺殺させた、ってこと?」

「その通りだ、総子。レッドサマーは、大阪でも悪さをするかも知れない。それと、このナイフガン、闘いの中で使われる可能性もある。ひかる君に確認したが、以前、銃から怪獣を撃つオモチャがあったらしい。そこからヒントを得たガンかも知れない。」

「南部興信所、大活躍やったみたいやけど、留守してすんませんでした。今、新婚旅行から帰りました。」大阪支部から声を上げたのは、幸田所員だった。

 横から澄子が顔を出した。「総ちゃん、梅干しコウテきたでえ。」

 大前が横から顔を出した。「EITOエンジェルズは直帰。会議は明日や。」

 午後8時半。大阪府警。テロ対策室。

「じゃ、またChot GPTですか?それにしても、ダークレインボーが絡んでくるとはなあ。やはり、プライドですかね?」と真壁が小柳警視正に尋ねた。

「Chot GPTは関係ない。恐らく、レッドサマーの計画を、『えだは会』の者が横取りしようとした。それをレッドサマー嗅ぎつけ、話がおかしくなった、というのが真相だろう。『えだは会』にスパイがいるということだな。やっぱり実行犯しか捕らえられなかったな。指示は『マニュアル無視』か。明日、吉本知事は府議会と知事会に『綱紀粛正』を徹底するように申し出るそうだ。役所職員は真面目に仕事すべし、とな。」と小柳警視正は応えた。

「区役所の職員を使って不正処理。イマイチ何をしたいのか分かりませんな。」と佐々ヤンこと佐々警部が言うと、「以前、斉藤理事官に那珂国の組織は、『日本の分断』を目指している、と言われたことがある。こんな攻撃をするとはな。2人とも、もう帰っていいぞ。」

「3人とも、でしょ。あ。警視正と私は一心同体だから、数に入らないか。」と言いながら。芦屋一美が入って来た。

「笑えないわよ。あんた、笑いのセンスないから、総子に習ったら?」と言って、芦屋二美が入って来た。

「あんたら、いい勝負よ。」と言って、芦屋三美が言った。

「確かに笑えないな。」と言って、小柳はロッカールームに向かった。

 翌朝。午前5時。道頓堀川水門。

 38年ぶりの阪神タイガース日本一に沸いた道頓堀だったが、今は静かになった川に男の死体が上がった。後に、失踪していた松屋警部だと判明することになる。

 ―完―


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