第20話 悪魔に魅入られた人達⓷

悪魔に魅入られているかいないかは、善人か悪人かはさておき、一つの特徴がある、と、只野さんは言う。

「快楽主義かどうかね。お酒にタバコ、ギャンブル、不貞を働くありとあらゆる点で、その人の事が総合的にわかるのだけど、特徴的なのは、頭が良い、てところね。頭が良い上で、悪知恵が働く人ね」

「善悪知る木の実を食べた結果ですからね。善悪知って、その上で、知恵がついていくから、、、松井は悪知恵が働くのですね。だって混み合っていた車内で、メスを使っても、一般的には『医療行為』と見えますからね。白衣を着ていたし、、、本当に悪賢い、。、」

「その松井さんと言う人がW大学の医学部であっても、お医者さんになっても、本当の意味で成功しないでしょう」

「それにしても日野さんは、武道を知っていたなんて、、.」

「日野さんのお兄さんは合気道の開祖、植芝盛平の息子の吉祥丸先生のお弟子さんですからね。多分お兄さんから教わっていたのでしょう」

日野さんはの事は私はまだ何も知らなかった。


昭和32年の春。私はまだ若い。この先の未来に対し、なんら不安がなかった。例え、森家に襲い掛かる魔の手が忍び寄っていたとしても、未然に防ぐ事が出来たことで、安心しきっていた。

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