「聖書にはなんて書いてある？」

松井、と呼ばれた男性が言う。

「自分で読め！」

「汝の敵を愛せよ、て書いてあるよなぁ、違うか？」

「だからどうした？」

「敵を大切にしろ？　馬鹿だろ、お前達」

松井が懐から、何かを取り出した。私はそれが医療で使われる、メス、と言う事に気が付いた。

ーW大学の松井とは、あの人か、、、ー

瞬時にして理解した私だが、それとは関係なく事は進む。

やられる、と、思った瞬間、その近くにいた男性が、スッと間に入って、

「この人を刺し殺すつもりか？」

と言った。

　私はハラハラして見ていた。

　男性は松井の頭を拳で一撃し、メスを小手返しで、奪い取ると、松井の手に刺した。松井は、痛て、何しやがる、放せ、と言う。男性は松井の仲間を、睨んで、松井を電車の床に叩き伏せると、電車からホームに降りた。

国英と呼ばれた男性や周りのクリスチャンの人達は、呆気にとられた。私も。

「あいつは、、。」

国英、と呼ばれた人が呟く。

私だけが、後で気付く。日野さんであると。

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