第18話 悪魔に魅入られた人達

 神学を勉強する以上、ヘブライ語とギリシャ語、それと英語を話せるようにしなければいけなかった。私は英語の成績が良い。しかし、ギリシャ語が苦手、ヘブライ語はもっと苦手だった。これを克服しなければならない。誰かヘブライ語とギリシャ語を教えてはくれないだろうか、M大学の授業だけではとてもではないが覚える事ができなかった。

そこでM大学からほど近いT外国語大学に、人のつてを伝ってなんとか潜り込んだ。M大学の授業が終わると、電車を乗り継ぎT外国語大学の夜学部にこっそり忍びこんだ。当時、潔叔父さんは認めてくれたものの、義叔母さんは困っていたと言う。お風呂に入ってゆっくりしない私を見て。私にとり、神学は命だった。

「これも主の誘いだ。祈りながら勉強しているんだ❗️ 邪魔すんな❗️」

と、電車内で揉めあっていた若者達がいた。

「国英君、君は『ハレルヤ』がどう言う意味か知っているかい? あれはな、、、」

ーあれ、片方の集団はクリスチャン? 神学生かしら?、、、ー

「松井、お前は、単なる医学部の生徒だろ? 乞食を診てやらない酷い病院の腑抜けの院長のただの息子だろ」

「国英君、君はあれが実は脅迫紛いである、と言う法律があるのを知らんだろう。物乞いは、脅迫なんだぜ?」

「八代、お前、自分が法律を少しかじっているからって、憐れな人を見捨てる気か?」

「乞食は犯罪なんだよ。聖書より、法律書読めよ」

「分からん奴らだなぁ。その八代が手にしている法律書は、元々聖書に書かれてある、十戒から来ているんだ」

「その通りだ。国英、言ってやれ」

混み合っている車内で、神学生らしき人は言う。

「この前、品川で、辻伝道している奴がいたが、あれがクリスチャンの正体さ。神がいるなんて、馬鹿じゃない、、、か?」

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