第16話 神は沈黙しないと言った青年⓼

 日野さんは大手の電気メーカーに勤めていた。そして、婚約者がいたが結婚には至らなかった。婚約者の峰知子と言う女性が、交通事故で亡くなったからだ。その痛手から解放されないうちに、今回の騒ぎである。日野さんは憤慨していた。



 ある時、教会学校の先生をしていた、島田執事が、吉報がある、松村さんが今度、教会で結婚式を挙げる、是非日野さんも来てくれ、と言った。その結婚する日は、日野さんの休日出勤日だった。日野さんは初耳だったらしく、

「松村と私は竹馬の友ですが、、、あゝ、僕のことを気遣ってくれたのか、、、亡くなった知子さんは、、、松村とも仲が良かった。知子さんはしっかり者だからな、て松村がよく言っていた、、、」

と、私の席の近くで、島田執事と会話する。

 私は聞くべきではない、とは思いつつ、だが、興味本位で日野さんの会社の事を、今度は只野さんとの分かち合いでした。

「あゝ、久志さん? 確か今主任で、次は課長になるはずよ。あそこの会社は、高校卒業した者は係長、大学卒業したら課長って事になっているから」

「相当稼いでいるよ、日野さん。この間、僕に高校入学の祝いだって言って、ケーキ持ってきてくれたし、その後、日野さんが運転する車で、日比谷まで行って、クラシック音楽のコンサート代まで出してくれたよ」

只野さんの子供達が言う。

「婚約者の知子さんは、どの様な方だったのですか?」

私は思い切って訊いた。

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