第15話 神は沈黙しないと言った青年⓻
神は沈黙しない、と、街頭で叫んでいた人物は、日野久志、と、言うクリスチャンではないか、と噂がたった。しかし、日野さんは、
「君達、僕をなんだってそんな怪しげな人と見間違えるんだい? 確かに僕はクリスチャンであり、この教会に属しているけど、そんないい加減な伝道をする訳がない」
只野さんと私が見た青年は確かに日野さんとは違っていた事を皆んなに伝えた。
大谷牧師は、
「皆んなに疑われる要素が、君にあったんじゃないかい?」
と、やんわり日野さんに言った。
「佐藤さんと只野さんは違う、と言ったけど、『神は沈黙しない』なんて、いつも日野君、君が言っている事だ。最近じゃ、米国人の伝道師もいるがね。世間には3人は似た人がいるから、やたらと、主の御名を言って周りの人から浮きでるのは、、、なんだか、違うんじゃないかい?」
日野さんは黙ってしまった。日野さんの身だしなみは完璧だった。それに比べて、神は沈黙しない、と言った青年は、破れかけた袴を穿き、上背は、日野さんよりも小さかった。上に着ていた物も、日野さんのビシッと決まった洋服ではなかった。日野さんはバーバリーのスーツで身をかためていた。
「東園寺君だよ。多分。そんな怪しげな伝道するの」
日野さんの旧友である、村田さんが言った。私は教会の食事を摂りながら聞く。
「東園寺君はN大学を出た後、職に就かず、池袋近辺で、何やら怪しげな集会に参加している。確か、ヤクザ絡みの集会だ。東園寺君には困ったものだよ」
村田さんが言うには、東園寺と言う人はかつては熱心なクリスチャンだったが、大学に在籍してた時、落第に落第を繰り返して、『気が狂って』しまったらしい。教会の皆んなは『サタンに魅入られしまった東園寺』で知れた人だと言う。
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