第10話 神は沈黙しないと言った青年⓶
詐田が周を誘うのを、親類であり、年長者である私が言わず、誰が言う方が良いのだろう? 叔父、潔は良い顔をしない。義叔母さんも。年子の周の兄にあたる真はもう家から出て働いていた。真は国家公務員であった。
ー私が言うべきだ…ー
そう思って、私は周に言う事にした。それとなく。
「…周君」
私は周の部屋にそっと入って、周に声をかけた。周の部屋は異臭がしていた。座卓に注射器があり、その脇にヒロポンが置いてあるのが目についた。周はいわゆる『ヒロポン中毒』とゆう事だ。周は部屋の隅で布団を敷いて寝ていた。
「んだよ…」
出会った当初は気が付かなかったが、手は痩せ気味である。ヒロポン中毒患者は、身体からウジやゴキブリが出てくる幻覚を見て、精神崩壊を起こし、痩せ細り発狂して最後、憐れな死に方をする、と、当時の人ならば誰でも知っていた。疲労がポンと取れる、から、ヒロポンと名付けられただけで、その実質は覚醒剤だった。
ーまだ、初期段階?…ー
私は内心訝った。周はまだ幻覚を見てはいないみたいだ。すやすやと寝ている。
「周君…これやめようね?」
私はヒロポンを座卓から持ち出そうとした。捨てる為である。
「やめろ!」
怒声と共に、突如、周は起き出した。私がヒロポンを取り上げようとしたからだ。
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