第3話 ゆらぎの中に生きる少女⓶
「かつ子か?」
不意に呼ばれて振り向いた。
「叔父さん!」
プラットフォームで、立ち尽くしていた私を見つけたのは、叔父の潔であった。叔父はスーツを着て、ビシッとしていた。
「叔父さん、よく私の事覚えていたね」
「かつ子は姉さん似だ。間違うはずがない」
叔父は、やや太っていた。
「ここでは、その、なんだ、邪魔なる。よく来た。まずは、家に行こう。東京は道に迷う。慣れてから、東京見物すれば良い」
「はい」
私は手荷物を持ち、プラットフォームから叔父について行く。混雑する人混みの中。
「車中は混む。確かにその手荷物の量は正しかったな。懐中に気をつけなさい。財布はあるな?」
「はい」
「付いて来なさい。切符はあるな?」
「はい」
私は叔父に付いて行った。
「何日かかるか心配していた。かつ子、姉さんは大事ないか?」
「はい。1日間ほどかかりました。北海道の旭川からでしたから。連絡船に、夜行バスに、汽車に、と。行きには母(潔の姉)が見送りがありました。母は元気です」
私と平然と答えた。
そうか、と、叔父さんは、言うと、無言になった。私は沢山訊きたいことがあった。
ーと、言っても、叔父さん答えないだろう…ー
私はそう思って、叔父さん同様、黙ってしまった。
あたりは雨が降っている。まだ東京は夏ではなかった。
ー当たり前なのかしら、、、ー
私はそう思って、東京の梅雨空を眺めていた。
ー天気は分からない…ー
私はそう思って、叔父さんの隣で立っていた。
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