第11話 秘密のやり取り

制服が変わったタイミングでイリスが学校に来なくなって、美羽ちゃんは一人で責任を感じていたのかもしれない。

「そんなに泣かないで。イリスが学校を休んでいるのは美羽ちゃんのせいじゃないよ。男女共用制服になったのは、いいことなんだから。それに今、イリスがいなくなっちゃった原因は私が……」

「あのアカウント、乗っ取られたの」

美羽ちゃんが、やっと聞き取れるくらいのか細い声で言った。

「それって、アカウントを違う人が勝手に使っちゃってるってこと?」

 尋ねながら、怖くなってくる。

「今日、そのアカウントにログインしようとしたらできなかったの。何も変えてないのに、おかしいって嫌な予感がして、『ROSE BUD』で検索したら、み、身に覚えのない投稿があって」

「なんて?」

「『制服変わりました! 里玖ちゃん本当にありがとう♡ 実は、私自身も悩んでたんだ。あー、めっちゃ語りたい。誰かぁ』って……」

背中のあたりがぞくりとして、言葉が出てこない。全然知らない人が美羽ちゃんになりすましているなんて、凄く気持ち悪かった。

話を続ける美羽ちゃんの声も、震えだしていた。

「そ、その投稿に知らないアカウントから『制服の件ありがとう。私も語りたい』ってコメントがついてて。それ書いた人のアイコン、前にイリスが作ってくれたアイシングクッキーに似てて、た、たぶん、イリスだと思う」 

「待って、私も見てみる」

 耳に当てていたスマホを離して、SNS内で『ROSE BUD』を検索する。そこには、美羽ちゃんが話したやり取りと、その続きがあった。

『嬉しい! ずっと話せる人が欲しかったんです』

偽ROSE BUDのコメントだ。

『私も。同じ学校の人ですよね? 急だけど、今夜、花のお邸(やしき)で会えませんか?』

返事をしているar―501というユーザー名の数字は、イリスの誕生日と同じだ。

『それどこにあるの? これからは、DM(ダイレクトメッセージ)で話さない?』

偽ROSE BUDが提案し、以降書き込みはなくなった。

多分、この先はダイレクトメッセージでのやり取りに移ったんだ。

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