第10話 美羽ちゃんの真実
「美羽ちゃん?」
「心春ちゃん……うぅーっ、うぇっ」
確かに美羽ちゃんの声なのだけど、変なうめき声がする。
「どうしたの? 具合悪いの?」
「ち、違うの。イ、イリスがいなくなったの、あたしのせいなの。げぇほっ、うぇっ」
何が何だかわからないけど、うめき声だと思ったのは、どうやら泣き声みたいだ。それに、美羽ちゃんはなにか勘違いをしているらしい。
「美羽ちゃんのせいってどういうこと? イリスは私と喧嘩していなくなっちゃったんだ」
「そ、そうじゃないよ。前に制服の件で里玖ちゃんに向けた書き込みあったでしょ。あれのせいなの」
「ああ、あのイリスが自分で書いたって噂の……」
「あれ書いたの、あ、あたしなの」
「えっ?」
思ってもみなかった告白に心春は混乱した。心春は、すっかりイリスが投稿したものと信じていたし、SNSに学校のことを載せるのは一応禁止されているから、イリスは自分の仕業だと言えないだけだと想像していた。
まさか、美羽ちゃんがやっていたなんて、考えたこともなかった。でも、それがイリスがいなくなったのと何の関係があるんだろう。
「あれ、イリスじゃなかったの? どうして美羽ちゃんが?」
美羽ちゃんが鼻をすすりながら話し始めた。
「あたし……イリスに知ってほしかったの」
「知ってほしいって、何を?」
「……あたし達、最初は三人で行動してたじゃない? だけど段々イリスがあたし達から離れて、斉藤さん達と行動するようになって、寂しかったし、何か裏切られた気がして悔しくて……。だから、あたしだってイリスの役に立てるんだって知らせたくて、書き込んだの。いつかこっそり、あれ書いたのあたしだよって言うつもりだった。なのに、こんなことになるなんて……うぅーっ」
「美羽ちゃん……」
止まる気配のない嗚咽を聞きながら、心春は以前、美羽ちゃんが話したことを思い出していた。
イリスが松波さんと斉藤さんと話すことが増えて、とうとうお昼も二人と食べだした時、美羽ちゃんは言ったのだった。
「まー、そういうこともあるよね。友達関係なんて変わるのがフツーだし。別に喧嘩したわけじゃないし、話したい時は声をかければいいだけでしょ」
その後もイリスを避けるでもなく、変わらずに飄々と過ごす美羽ちゃんを見て、全然気にしていないんだ、と心春は内心びっくりしていた。
でも、本当は違ったんだ。
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