第12話 探しに
最初の偽ROSE BUDのコメントが書かれたのは、一昨日。続くイリスのコメントが今から13時間前。今朝、7時くらいかもしれない。
最後の会話が2時間前。18時くらいだとすると、ちょうど心春がイリスと公園で話したすぐ後だ。
──もしかしたら、心春とケンカした後、会うことに決めた……?
瞳を潤ませ、心春を睨みつけるイリスの姿が頭をよぎって、血の気が引くのを感じた。
「……心春ちゃん? 聞いてる?」
呼びかける美羽ちゃんの声が聞こえて、慌ててスマホを耳元に戻す。
「ごめん、聞こえてる。少し前から乗っ取られてたんだね」
心春は、なるべく平静を装って言った。
「制服についての投稿の為だけに作ったアカウントだから、ほとんど使ってなくて、今日たまたま見ようとしたの。でも、きっとイリスはROSE BUDのこと、ずっと気になってたんだね」
美羽ちゃんの言うとおりだ。もし心春がイリスの立場だったら、里玖ちゃんにお願いしてくれたのはどんな人なのか知りたいに決まっている。おそらく、時々チェックしていたんだ。
「イリスはたぶん今、美羽ちゃんになりすました犯人に会いに行ってるんだよね。でも、同じ学校の生徒なら、危ない目には合わなそうかな」
心春が確かめるように聞くと、美羽ちゃんが震える声で答えた。
「そんなの分かんないよ。うちの生徒のふりした、へ、変態かも……」
心春は言葉を失った。美羽ちゃんも黙りこくってしまって、しばらく沈黙が続いた。
ひょっとしたら思っていたより、ずっと深刻な事態なんだろうか。
あの公園で心春が優しい言葉をかけていたら、イリスはネットで知り合った人に会うなんて真似はしなかっただろうか。
「私、イリスを探しに行ってみる」
心春は思わず立ち上がって言った。
「探すって、心春ちゃん『花のお邸』がどこか分かるの?」
「多分、線路沿いの立派なお庭の家のことだと思う。色んな木や花がたくさん植わってて、近所の人はみんな『花のお邸』って呼んでる」
イリスは電車の窓から、そのおとぎ話から抜け出たみたいなクリーム色の家を眺めるのが好きだった。
「危険じゃない? 本当に大丈夫?」
美羽ちゃんが心配そうに尋ねる。
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