第8話

空が、青い


赤い大地にそれはいっそう映えて。

ああ、美しい。ね?アルセルくん。


寝転がりパラメータも全て消えた荒野を、指揮系統が狂ったディアボリカを、ボクは見上げている。


『生きているか?ガキ共』


内耳に響く男の声。

「やぁ、遅かったね。アンバー……」

『確認だ。巫山戯ていないで即答えろ』

「勿論さ、十全に生きているとも」

ブツリと通信が途絶え、モニタ上空に黒点が浮かぶ。

「完全に僕ら二人の戦果にならなかったのは、少し、悔しいね」

ディアボリカがゆっくりとボクらに歩み寄る。

ボクらの再起動までは、あと120sec。


「おやすみ、ディアボリカ」


 黒点が一気に拡がり空に巨大な円を描く。

戦略兵器指向聖槍。

拠点基地六ヶ所から射出されたタングステンの槍がビーコンの反応に向け降り注ぐ、シンプルな暴力。

極微量の調整しかできないため市街地では運用できない軍部の破壊兵器。

 ディアボリカの中に、ボクらは拳に包んだビーコンを置いてきていた。

これも、保険だ。

今の、機動力の死んだディアボリカに避ける術はない。

金属板が削られ、折られ、貫かれ、蹂躙される。

天使の輪郭は5秒も待たずスクラップになった。

ここまで完膚なきまでに破壊されれば数多のバックアップを用意していようが関係あるまい。


 視界にパラメータが戻る。アルセルくんが復活したようだ。

「Good night Arexel. Mission completed.」

 ボクは目を閉じた。後はアルセルくんと軍部がなんとかしてくれるだろう。

 抱きとめてくれる腕の存在を感じながら、ボクは眠りに落ちていった。

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