第7話

 ディアボリカの内部に向かい突き出るトラップを避けながら体内を破壊していく。

走りながら壁面に無造作にブレードを突き立て切り裂く。

反動に脳が揺れるが大した問題ではない。

流石に銃火器を機体内に向けるわけにはいかないのか壁や射出物の攻撃にシフトしたのはこちらに有利と言っていい。

 ボクは視界端の熱源に向かいアルセルを駆り、同時にタイマーを確認する。

残り稼働予測は7分。十全とは言えないがなんとかするとしよう。

間違えて機体外に飛び出したら集中砲火を浴びて終わりだ。

慌てず急いで確実に。だ。


 アルセルの体躯は突入前より縮んでいる。3mを切れば機体の維持と分離が危うい。

ボクなんかの質量で補えるモジュールはごく少ない。気をつけねば。

ディアボリカの破片を取り込めれば楽なのだが、残念ながらモジュール同士は分解されるまで反発してしまう。

「ここは、胸辺りか」

 人体の内部構造とは似つかないものの、広い空間にバックアップコアが複数あった。アルセルくんも体内にいくつか持っている。これのお陰で身体を半分にされてもアルセルくんたちは復活できる。

とはいえボクらにとっては不都合極まりない。ブレードで両断し、ちゃんと潰しておく。

噴き出した循環液が血みたいだ。

黒い機体じゃなければちょっとダークヒーローじみていたかも。

たらればに思いを馳せながら、残骸に拳を埋め込んだ。



 思いの外熱源は下の方に移動していた。自ら思考する自由は無いはずなのでAIの判断だろう。

人が入るサイズの黒い球がいくつかのケーブルで吊られている。

近づいた瞬間壁に違和感を感じ身を引く。

外部から刃物を突き立てられたと気づいたのは二発目だった。

もう残り3分もない。

「仕方ない、か」

ブレード出力も不安定になってきていた。一気に決めなければ。

ボクらはブレードを壁面に突き立て、脚から肩口までの全てのバーナー出力を最大にした。


爆発


 周囲の壁、床、接続コードを全て引き千切り、死体電池が空を舞う。

 一緒に吹き飛ばされたボクらも赤い砂を巻き上げながら荒野に転がった。

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