第6話

「AI制御で自壊も躊躇わないか、流石に新型は倫理統制もぶっ飛んでるね」

 視界が軽く明滅する。

練習時には比肩できない程一気にかかった重力と脳神経への負荷。

 アルセルのモジュールに護られてはいるが、ボクの肉体は幾らか損耗していた。

 モニタのバイタルチェックはずっと赤いままだ。

「足りない分はボクを使って。アルセル」

 実際ディアボリカのパイロットとボクだって大差無いのだ。

それでも同情はしない。そこに入ることを決めたお前に躊躇など持たない。

 ボクの壊死した肉体がアルセルに吸収される。

 死んでやる気は毛頭ない。きっとアルセルが悲しい顔をしてしまうから。

 ボクが減ってしまったことを知れば、どの道悲しんでしまうのだろうけど。

「Release、アルセル」

 胸のハッチから蒼い光が漏れ出す。

起動機、ボクの心臓から作られた、アルセルを動かす光。

 ボクらは半機械化された一つの心臓で動いている。真の意味で一心同体と言っていい。

 アルセルの手の中に収まり、引き出される蒼い光。

これを破壊されればボクらは死んでしまう。それでもボクらの一番強い装備もまた、起動機だ。

「アルセルくん」

 光が集束し刃を形作る。

そのまま倒れるようにディアボリカに突き立てると、刃はチーズを切るように機体に吸い込まれていく。

機体を回しながら腕を振り抜くと周囲が丸く斬れ、落下する。

ディアボリカの中はアルセルほど生物的ではない。それでも足下に微かに流れる循環液を踏みしめると近い存在だと再認識せざるを得ない。

アルセルほどの精密さは無いがディアボリカのコアも可動設計。熱源は遠ざかっている。

 起動機を兵装として使える限界は10分程度、急がなければ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る