第2話

 こんな朝は初めてではない。

 本当に従僕として恥ずかしい事だがこの荒野に佇む街に来て早半月、3日に一度は何かしらの醜態を晒している。

 早く早くと焦りだけが嵩む。

「輸送経路は合っているのかい?本部から連絡は」

確認する。

「修正はなし、ポイントで待機せよ。だ」

「そうかい……」

 俺達は軍の命令で兵器の調査のためこの街に来ていた。二人で可能なら車両の破壊工作までやれとは、兵役とはいえなかなか酷いプランだ。

 辺り一帯は赤い荒野だが、帝国外縁から首都に巨大兵器を送るには渓谷を避けたこの辺りを通る必要がある。

 見晴らしだけは抜群だ。例え補給に寄らずとも数km圏内なら見つけ出せる。

 しかし、本来であれば10日前には輸送用の大型トレーラーを捕捉できている予定だったが、それらしい車両どころか街に入る車もこの半月ほとんど無い。

 昨日は探索で疲れ果て、戻ってそのまま寝潰れてしまった。


 レディが家事をしたがるのはひとえに俺の怠慢と力不足が原因だ。ハウスメイドを連れてこれなかった上、逆に主人に世話されるとは情けない。

 暇さえ潰させれば変な気は起こさないと踏んでいたが、まさか本屋どころか広域放送すら無い街があるなんて俺は知らなかったのだ。早く衛星の軍用外利用も進めてほしい。

 とはいえ、事前調査にか弱いご主人様を連れ出すほど愚かにもなれない。

 結果、彼女一人を娯楽もなく宿に軟禁している。

 たまには飴も必要か。

「レディ、今日は買い物に行こう」

「!?……いいの……?」

 本来は駄目だが、このままレディが家事をやりたがり更なる怪我をするよりは上層部のおっさんにどやされた方がまだマシだ。

 少し街から離れた所にショッピングモールがある。ガラス張りの派手派手しい外観を見るに富裕層向けの施設だろう。きっと暇つぶしの道具も手に入るだろう。

 決意はしたものの準備は大切だ。

 レディに厚着をさせ、ヘルメットを被せ、バイクの後ろに座らせて、落ちないようベルトで俺に固定した。

「アルセルくん、よく過保護って言われない?」

「軽々にバイクで運んで良い脆さじゃないからな」

 街はそこそこ寂れている。土壁の路地に座り込んだ浮浪児や物乞いと中心部の白亜の庁舎がなかなか対象的だね。

 俺達は人混みを避けて街を抜け、モールへ向かった。



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