第61歩 ぱちんこ

 内装業者のSさんは何年か前に大きいホテルの現場を請けた。

建物には警備員さんと他の業者が、いくつか入っていた。


 Sさんの担当はカーペットと壁紙の張替えだった。

作業が遅れると他の施工業者に迷惑がかかるので

体力的にはキツイ現場だった。


 ある日、少し残業していると時々ガラスか何かが

パチン、パチンと音を立てているのに気がついた。


―パチン、コロコロコロ・・・


気にせず作業していると、また音がした。

終わらない作業に見切りをつけて帰ろうと廊下を歩いていると。


―パチン、コロコロコロ・・・・まだ音がする。


すると足元に小さな石が転がってきた。

良く見ると廊下に何個か小さな石が転がっている。


 見通しの良い廊下には誰もいない。

 

「あの音は、この石か」と思ったが何処から来るのかわからない。

 とりあえず一階にいる警備員さんに報告すると


「あ、私も毎朝、石拾って歩いてますが誰の仕業か、わからんですよ」

やがて、トラブルもなく無事作業は終了した。 


「その現場、仕事以外には、そのホテルに行ってませんが、今でも石が飛んでくるのかもしれませんね」とSさんは話を締めくくった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る