第48歩 固定電話

 Iさんは大学時代、友人が新しい部屋に引っ越したというので何人か連れ立って遊びに行った。

 皆が集まる理由は麻雀だった。


新しい部屋は、ある程度なら夜中、賑やかにしても苦情の入らない部屋で不夜城が評判になり

友達の輪も出来た頃、部屋にある固定電話が噂になった。


 その固定電話は引っ越してきたとき既に、この部屋にあって前の住人が置いていった電話だと聞いた。


 皆で麻雀を楽しんでいると夜中に、その電話が鳴る。


―プルルルルルルル・・・プルルルルルルルル


メンバーの一人が電話を取ろうとすると


「でるな!」部屋の主が云う。


Iさんもその場にいたが誰も電話に出ず、そのままになった。

やがてIさんが麻雀に疲れて休んでいると朝方、また電話が鳴っている。


Iさんは部屋の主に聞いてみた。

「携帯あるのに固定電話代もったいなくないのかい」

すると友人は事実を話してくれた。

「あの電話、本当は繋がってないんだ」


まさかと思って確かめると電話は『無音』で線は差し込んであるが確かに繋がっていない。


 当然、電話代の請求もこない。


Iさんは友人に

「電話に出たことはないのか」聞くと

「ない」と彼は答えたがIさんは嘘だと思った。


 だが追求はしないで置いた。


 その電話は、それからも忘れた頃に鳴っていた。


赤い丸型のかわいいプッシュホンだった。

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