第17話 流行り病

ビーンズ先生の催促勉強講座が始まった。


じゃあ、まずな。

1本のペンがここにあるだろう?

そしてまたここにも、1本のペンがある。

では、これを合わせたら合計何本だ?

そう、2本。


次に、2本のペンがここにあるだろ?

それにこっちの4本のペンを合わせたら?

……そう、6本になる。

これが和の計算だ。


それの逆に…。

6本のペンから1本のペンを奪ったら…?

そうそう、5本。

それから5本のペンから4本のペンを奪ったら…?

そう、今度は1本になる。

これが減の計算だ。


「算術、意外と簡単だわね。」

「そうだよ。簡単なんだよ。勉強なんて言うのわな、理屈が分かってしまえばどんなに複雑そうに見えるものであっても結局は簡単なものになるんだよ。」

「へぇー。もっと教えて!」


それから、ビーンズ先生は、乗の計算と除の計算も教えた。

驚いたことにミカエルは吞み込みが速かった。

まさか1日で、算術をマスターするとは思っていなかったのだから。


「本当は、算術以外も教えたかったけど…」


すっかり算術にはまってしまったミカエルは、ビーンズ先生に問題を求めた。

ミカエルはビーンズ先生が考えていたプラン上の2週間分の算術を終えてしまった。


「まぁ、取り敢えず算術だけでも…」


と、結局ビーンズ先生は1日中ミカエルに算術の問題を出し続けた。

流石に、昼食を抜きにするには子供の成長に良くないので、ごねるミカエルを引きずって、食堂へ連れて行った。

食堂でも問題を出すようにと要求してくるミカエルに呆れ返るビーンズ先生であったが、早く慣れてもらうのに文句はない。

仕方なしに、問題を出していた。

2人でスパゲティを食べていると、食堂の反対側が騒がしくなった。


「…何でしょうか?」

「何だろうね?ちょっと見てこようか?」


席を立って、様子を見に行ったビーンズ先生だが、人が多くて中が見えなかった。

仕方なしに諦めて席に戻ろうと知ら時、食堂にたまたまいたシスター・ミリセントに話しかけられた。


「ビーンズ先生。この野次馬…」

「ああ、シスター。これは何の野次馬なんだい?」

「丁度良かったかもしれないですわ。9歳の子供がここで今し方食べた物を吐いてしまったのですの。」

「…吐いただと?その子供は今どこに?」

「まだそこにいますわよ。」


瞬時に(何らかの感染症かも知れない)と思った、ビーンズ先生は直ぐにその場にいた人達にはなれるように言った。


「皆様、この子供から離れなさい!」


人だかりはビーンズ先生の大きな声に驚いて、段々となくなっていった。

ビーンズ先生はそれから次から指示を出した。

食堂は直ぐに閉鎖させ、食堂にいた者は手あたり次第体温を測らせた。

自分自身と一緒にいた弟子のミカエルは布マスクをつけた。

ビーンズ先生は子供の診療をして、吐物はミカエルに片付けるように言いつけた。


「ミカエル、片付けたら。このアルコールと言う液体をここに沢山かけるんだ。アルコールは乾かないと効果を発揮しないから、乾くまで待つんだよ。」

「分かったわ。この汚物はどこへ捨てれば良いのかしら?」

「…これは、この布に包んで中身が出ないようにしてからこっちのごみ場後に入れて、医務室まで持ってきてくれ。」

「分かった。」

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ミカエルの再就職 玉井冨治 @mo-rusu

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