第15話 治癒魔法師修行開始!

ポーラ・ジェーキンスは先日、体調が悪いのにも関わらず無理して体を動かし、倒れた挙句、数日間意識を失っていた。

ポーラの親友であるミカエル・パースはポーラのお見舞いをしに孤児院の医務室へと毎日訪れていた。

そこで、医務室室長ないしはセント・ルメール大聖堂孤児院附属医局局長であるソルディオス・ビーンズに見初められ(医を目指す人間として、勝手に…)、ミカエルは彼の弟子となった。


「こうして、よくよく医務室を見てみるとちょっと景色が違うのね。」

「ああ、そうだろう。ちょっと不思議な感じがするだろう?」

「ええ。何だか少しくすぐったい気分だわ。それで、私はビーンズ先生の弟子になったらしいけど、何をするのでしょうか…?」

「ああ、まずは勉強をしないと始まらない。君は、治癒魔術について何か知っているか?」


ミカエルはビーンズ先生に自分が『癒しの才』を使った時に感じたことを話した。

最初に使った時は、ただ歌っていただけで何も感じていなかった。

次に使った時は、傷口を塞ぐことを考えて行わないと治癒を完了できなかった。

それ以降、『癒しの才』を使用する時、感情的なっていたら考えなくても治癒できたが、平常心の時は意識が必要だった。


「やはり、君もそうなのか…」

「はい、だから『治癒魔術』を使用するには体について知らないといけないんでしょう?」

「その通り。でも君の場合は、それ以前の問題だね。」

「…」

「この本を読んでみなさい。」


その本は、『誰でも分かる! 簡単説明で人体の構造と機能』というタイトルであった。


「じんたい…、こうぞう…、きのう…」

「このタイトルの意味は分かるかな?」

「分からない…。子供私には難しいわ。」

「そう、だから君はこれを読めるようになるために、勉強をしないといけない。本当に基本的な文字の読み書きと専門用語についてはそれから教える。」

「ビーンズ先生が、私に勉強を教えてくれるの?」

「ああ、だがちょっと厳しくなるが良いかな?」


『厳しい』とは、どれくらいの物なのか、分からなかった。

ミカエルが転生前に生きていた世界よりも厳しいものなのだろうか?

それとも、それに比べたらそうでもないのだろうか?

その『厳しさ』は定かではなかったが、将来立派な人間になれるか不安になっていたミカエルは、折角教えてくれると言うのだからそれにしがみつきたい。


「『厳しい』のはちょっと…。でも自信ないけど頑張っていみる…」

「あはははっ。自信ないか。まぁ君ほどの才能があればどうにかなるさ。それに、治癒魔法師の仕事はただ『治癒』や『治療』だけではない。『看護』も仕事さ。君が基本的な勉強をしている間は、『看護』を身に着けてもらうから、大丈夫。」


『看護』とは、どんなものなのかミカエルは分からなかった。

しかし、治癒魔法師になるためにただの勉強以外の事も教えてもらえるならちょっと安心だ。

これからの事を考えると、不安と期待が入り混じったような心情になる。

ドキドキを胸に、ミカエルはまず6歳児用の教材を自室へ取りに行った。

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