第14話 ミカエル、治癒魔法師に?
ポーラの一件があってから、ミカエルは医務室へ入りびたることになった。
孤児院で仲良くしているのはポーラだけであったというのもあるし、その唯一無二の存在である親友が病気で倒れているともなれば毎日お見舞いに行く他ない。
毎日毎日、医務室へ出向き、ポーラの様子を伺っていたミカエルを治癒魔法師のソルディオスは見ていた。
ポーラの一件から4日経った日の事、ミカエルの医務室入りびたりが習慣化してきた辺りで、ソルディオスはミカエルに話しかけようと決心した。
別に、子供に話しかけるのを躊躇していたわけではない。
ただ、ショッキング出来事の直ぐ後では、子供の精神的容量では受け止めきれないと見たからである。
「ミカエル。」
「はい。」
「毎日、来てもらっているが、ポーラの身体は一瞬で治るわけではない。彼女が意識を取り戻して起き上がっても良いような状態になるまでまだ少しかかるよ。」
「はい、先生。何となく分かっています。でも、そばにいたいんです。」
「そうかそうか、では子供時代の貴重な時間を無駄にするわけにはいかん。この時間をただポーラを一日中見ているだけの時間にするのではなく、折角私のいる医務室へ来たのだ。色々教えてやろう。」
「…、何を?」
ミカエルは突然の申し出に訳が分からなくなっていた。
それもそうである。
ただ、ポーラが心配で、ポーラのそば以外に居場所などないのだから、ここにい来るしか選択肢がないから、医務室へ来ているだけなのに。
ビーンズ先生は、ミカエルを少し勘違いしてみているようだ。
ミカエルはそんなに器の大きな子供ではない。
寧ろ小さい方だ。
だから、ミカエルはそれも含めて、よく分からなかった。
「でも、ビーンズ先生。私は先生の思っているような子供ではないのよ。頭も悪くて全然優秀じゃないの。」
「ミカエル。君は勉強を本気で頑張ったことはないだろう?」
「ええ、つまらないし。面白くもないもの。」
「そう、君は真の意味で勉強をしたことがない。それは勉強をしている子供達と比べるのだから、勉強ができない劣等生のように見えるだろうよ。」
「ええ…、」
ミカエルは、突然ビーンズ先生に自分の事を貶されて少し戸惑った。
確かにミカエルは、勉強というものが大嫌いで、その面においては全然優秀ではなかった。
転生前の彼女が生きていた時代では、女の子が勉強するなどなかったから、中身がお祖母ちゃんであれ、年の功など意味のないもの。
勉強が面白いとも思えなかったから、積極的に行おうとも思えなかった。
相手を貶した割に、ソルディオスは穏やかな表情をしていた。
そして加えた。
「でも、私は聞いたよ。一昨日の夜、シスター・ミリセントがやってきてね。君には『治癒の才』があるらしいじゃないか。それに君は手先が器用で手芸や料理が大好きだとか…。手先が器用なのは治癒魔法師にはぴったりな才能なのだよ。」
「そ、そうなの?でも、私そんな褒められるような者でもないわよ。」
「まぁまぁ、とにかく、私は君を気に入ってしまったのだよ。もし君が嫌でなければ私の弟子になって、『治癒魔法師』を目指してみないかい?」
これまた突然の申し出で、今度はミカエルは驚いてしまった。
自分のような、手芸や料理しか心得の無い、勉強もろくにできない劣等生がビーンズ先生のような優秀な方の弟子になるなど、あっても良いものなのか。
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