第12話 医務室にて
「ああ、彼女の病気はね…、とその前に」
それから、白衣の長身男が話し出した内容は、ミカエルには難しすぎた。
中身は老人とは言え、この異世界での年齢はまだ7歳。
難しい言葉など学んでいなく、知識もまだまだ足りない。
だから、男の話は理解できなかった。
ポーラは生まれつき病気があったという。
ポーラの生まれであるジェーキンス家はこの世界の、ミカエル達が生まれ育つ国の王の側近を代々務めているとのこと。
ポーラはそのジェーキンス家の長女として生まれたものの、身体が弱くジェーキンス家にそぐわないと判断され、孤児院へ送られてきたのだ。
(ひどい話だわ。)
ポーラの身の上話の後に、病気についての説明をされた。
ポーラの病気は全部で6個。
・悪性関節リウマチ(治癒済み)
・先天性大動脈弁狭窄症(治癒済み)
・口唇口蓋裂(治癒済み)
・全身性エリテマトーデス
・慢性甲状腺炎
・溶血性貧血
悪性関節リウマチと先天性大動脈弁狭窄症と口唇口蓋裂という病気は既に治癒魔術によって完治しているという。
しかし、全身性エリテマトーデスと慢性甲状腺炎と溶血性貧血は現在開発されている治癒魔術でも完治することまではできないそうだ。
「そんなぁ…」
「だからね、ポーラは暫くここにいないとなんだ。」
「分かったわ。」
病気の詳細や、症状などはよく分からなかった。
名前だけ覚えた。
ミカエルもポーラの助けになるようなことをしたかった。
でも、治癒魔術はまだ覚えていない。
ミカエルが『治癒』で使用しているのは『治癒の才』であって、あれはしっかりした学問としても治癒魔術ではない。
ミカエルは何も学んでいない。
人間の体の構造もよく分かっていなのだから。
その日、ミカエルは結局自分の部屋に戻るしかなかった。
夕飯は昼間の体験がショック過ぎて喉を通らなかった。
お馴染みのシスター・ミリセントにご飯を食べることができるように、豆ごはんをおにぎりにしてもらったり、サラダにチーズを乗せてもらったりしたが、今回ばかりは効果がなかった。
「私に何かできることはないのかしら…」
『折角治癒の才があるのに…』と、ミカエルはベッドに入り布団にくるまりながら考えていた。
自分にできることは何か。
結局のところ、自分にできることは何もないのだと、自覚するしかなかった。
現時点でミカエルにできることは何もない。
『治癒の才』を持っているだけで、今までミカエルは何もしてこなかったのだから。
ちょっと練習するくらいのもの。
でも、幾度か『治癒の才』で傷を治して分かったことがある。
それは、深い傷の場合、傷を塞ぐことを考える必要があるということだ。
だから、ポーラの病気など、身体を学んでいなければ治せるはずがない。
ミカエルはただ、彼女のお見舞いに行き、ポーラを励ますこと位しかできないのである。
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