第9話 一人ぼっちの孤児院

ミカエル・パースは『癒しの才』がある。

『癒しの才』とは一体、どのような才能なのだろうか。

周囲の子供達はそれを聞いて、ミカエルを虐める計画を立てた。

子供達は『癒し』と聞いて、それを汚らわしいイメージでとらえた。

元々ミカエルは周囲の子供達から少し嫌われていたので、とても良い都合で彼女への嫌がらせはエスカレートしていった。


「ミカエルは将来風俗嬢になるんだろう?」

「うわー、汚らわしいな。」

「何それ、落ちた人じゃん。」

「おい、ミカエル。みだらな姿を見せてみろよ。」


子供達は一体どこでそんな言葉を思えてくるのか、不思議ではあったがミカエルも言われていることの意味は分かっていた。


(私はそんな風に言われる筋合いはない。それに私は曲がったことなんてしたくないし、落ちぶれた覚えもないわ。)


「何よ。こんなのただのくだらない占いだわ。そんなもの信じてどうするのよ。」

「ミカエルは馬鹿だな。この前の占いは100パーセント当たるんだよ。だからお前は将来風俗嬢になるしかないんだよ。」

「お疲れさんー」

「あははは、キッタネ」

「そんなことないもの…」


ミカエルは部屋に閉じこもり、その日はもう部屋から出て行こうとなど思えなかった。

いくら子供の発言であろうと、傷付くものは傷付く。

いつか、自分が大人になったら、必ず見返してやるんだと誓いながら泣きじゃくった。


その頃、シスター・ミリセントに珍しい小さなお客さんが近づいて行った。

ポーラ・ジェーキンスは虐められてこそいなかったが、大人しい性格をしているので子供達には少し馬鹿にされていた。

陰気で、弱弱しいやつ、それがポーラであった。

だからシスターなどにもあまり声をかけなかったが、ミカエルの才能を少し気になっていたようだ。


「シスター・ミリセント。ミカエルの『癒しの才』って、皆が言っているような卑しい才能ではないのでしょう?あの『癒し』って、異性にみだらに接する意味ではなく、何かの痛みを癒すって意味でしょう?」

「あら、ポーラ。その通りよ。全く、皆ミカエルが苦手だからと言って虐めるなんて。後で、ちゃんと説明してあげないとミカエルが可哀そうで仕方ないわ。」

「シスター、私見たのよ。この間、ミカエルがお歌でシスターの傷を治しているところ。」

「そうだったのね。そうだわ、ポーラ、あなたのおかげでいいことを思いついたわ。」

「え?」


シスター・ミリセントはそういうと、楽しそうに、部屋にこもっているミカエルの元へ足を運んだ。


「ミカエル。私、良いこと思いついたのよ。」

「うぅ…、私もう何でもいいわ。もう終わりよ…、ここは私には合わないんだわ。」

「違うのよ、ミカエル。あの子達が子供なだけ。あなたはとても立派だわ。ほら、あなたはやり返したりなんてしないでしょう?」

「ええ、私と同じ思いなんて誰もしなくていいのよ。こんな思いをするくらいなら、死んだ方がましだわ。」

「まぁまぁまぁ、そんなこと言わないで、ミカエル。あなたはこれから人々を救うための才能を持っているのだから。」

「どういうこと?」

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