第8話 ルメール教徒の星占い

『星の日』とは何のことか。

知らない者も多いだろうから、親切な私が説明して差し上げましょう。

ごほんっ。

えー、『星の日』とは。

1年365日ある中のたった1日しかない、この世界の『才能』に深く関わる唯一の記念日のようなものである。

『星の日』は毎年違った位置にあり、いつ来るかはその1週間前になるまでは分からない。

だから、本日の儀式をうっかりできなかったなんてこともざらにある。

幸い君達は、生活している場所が協会なのだからこの儀式を逃しようがないわけだ。

と言っても、何歳でこの儀式を受けても構わないのだから、いつでも良いっちゃ良いのだけどね。

まぁ、本日『星の日』は1年で最も魔力の高まる日だからして、この『覗きの儀式』を不確実ではなく、100パーセントの当たり率で行うことができるのだ。

そう、『才能』とは『魔法』の事である。

『魔法』はそれぞれが持つ形が違うから、その使い方や何に適しているのかも違う。

これから大人になる君達は、今その形や性質を知ってそれをこの先、生きていくにあたりどのように活かしてくのかを考えなければならない。

では、儀式を始めていく。


ミカエルは最後にこの儀式を受ける。

この儀式は誕生日順で受けるのである。

ミカエルは一番最後に生まれたから、最後に儀式を受けるのである。


「ポーラ・ジェーキンス。」


ポーラはミカエルの少し前に生まれた。

ポーラが呼ばれたということは、ミカエルは次だ。

そして次が最後だ。


「ポーラは……、『創造の才』。君は珍しいね。実に素敵だ。」


覗き人は、魔法の形である『才能』を除くと、その才能の名前を伝えた後、必ず何かしら褒める。


(詐欺師みたいだ…)


ミカエルはそんなことを考えながら自分が呼ばれるのを待った。


「次は最後、ミカエル・パース。」

「…はい」

「おっと、元気がないな。どうしたどうした?」

「ミカエル、大丈夫よ」

「シスター…」


不安でいっぱいのミカエルを励ましてくれるのはシスター・ミリセントであった。

不安な顔をしているミカエルを抱きしめてやる。

ミカエルは少し安心して、覗き人の元へ行く。


「ミカエル。大丈夫、苦痛はないよ。顔を見せてくれ。瞳を見ないと儀式ができない。」

「こうで、良いかしら…?」

「そうそう、それで良い。目を逸らさないでね。途中で止まっちゃうから。」

「んー。目も瞑っちゃダメ?」

「ごめんね、もうちょっとだけ我慢してね。」


目がかぴかぴに乾燥していくのが分かる。

確かに痛みはないが、中々の嫌な感じである。


(もう無理…、)


目をぱちくりさせようとした時、儀式は終わったみたい。


「もう大丈夫、瞑っても構わないよ。ミカエル、君は『癒しの才』がある。とても良い才能だよ。」

「『癒しの才』…」

「あらまぁ」


ミカエルには難しい言葉で、どんな『才能』『魔法』なのかよく分からなかった。

周囲にいた子供は馬鹿にしたかのような顔をする者もいれば、汚らわしいものを見るような顔をする者もいたが、シスター・ミリセントは少し驚いたような、しかしとても嬉しそうな顔をしていた。


「『癒し』って、何…?」

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