第7話 才能
『ミカエルには音楽の才があるのではないか?』とシスター・ミリセントは言った。
どうやらこの世界にはミカエルの『音楽の才?』のように、実に億を超えるほどの多種多様な『才能』が有るらしい。
ミカエルも『才能』というものは知っている。
しかしミカエルのしているそれは、この世界で知られている『才能』ではなく、もっと不明瞭でもっと不確かなものである。
この世界での『才能』とは、いわば天から授かった『超能力』のようなものである。
本当にミカエルには『音楽の才』があるのかどうかは分からないが、ミカエル以外にも施設の子供達は既に『才能』を開花させている者も少なくない。
例えば、ポーラ・ジェーキンス。
彼女はミカエルと同い年の体の弱い女の子。
彼女は『創造の才』の持ち主である。
彼女の『創造の才』では様々な物を作り出すことができる。
しかしそれは呪いの強い才能ならしく、彼女は日々その合併症状と闘っている。
自分から何かを作り出す能力というのは、特に珍しいらしく彼女の存在や才能については一切口外禁止とされている。
「でも、シスター・ミリセント。本当に私に『音楽の才』があるのかどうかはまだ分からないわ。」
「あら、ミカエル。知っているの?」
「ええ…」
ミカエルは知っていた。
風の噂で聞きつけていたのだ。
『才能』の見つけ方があるのである。
『覗きの才』を持った才能人が何らかの儀式をして、覗いた相手の才能を見るというのだ。
本当にそんなもので、相手の能力を見ることが出来るのかは不明だが、外からただ見て判断するよりは確実な才能の探し方である。
そもそもその才能をミカエルは未だに信じられていないところもあるのだが。
自分が直接その才能で何かをしない限りは、とても信じられるのもではない。
何せ、『才能』は超常現象と言っても過言ではないのだから。
「ああ、私に才能がなかったらどうしましょう…」
「大丈夫よ、才能の無い人などいないのだから。」
「そうなの?」
「そうよ、人族で才能なく生まれたらそれはそれは、それこそ呪われているものですわ。王族のように…」
「え?王族?」
「まぁ、この話はお仕舞い。」
『王族は呪われている』『王族は才能を持っていない』初めて聞いた。
才能を持っていない者はこの世界では異質な存在であるのか…。
ミカエルはますます、自分に才能がなかったらと心配になった。
夕飯を食べた後は皆で、広間に集合してお祈りをする。
転生前の世界でいうところの、キリスト教やイスラム教などで行うお祈りのようなものをルメール教でも行っている。
『大いなる力は母からの授かりもの 大いなる才は父からの授かりもの
私達の生きる日々に平和と安心を ルーメル』
これがこの教会の祈りの言葉である。
皆、直立不動で正面を向き、目は瞑るのが決まり。
ルーメルの誓いが終了すると、今年7歳になる子供の身がその場に残された。
セント・ルメール大聖堂の司教と附属孤児院の施設長もそこにいた。
司教が言う。
「突然だが、少年少女達。明日は星の日だ。明日、才能発見の儀式をする。」
続いて施設長が言う。
「皆さん、明日は特別なお客さんが来るので、良い子にして儀式を迎えるのですよ。苦痛はありません。ただ、覗いてもらうだけです。では、それぞれお部屋へ…」
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