第3話 案内人
その案内人が話し出した内容は、ミカエルの知っている世界よりもさらに大きな世界の話で、ミカエルが知っているどんなに複雑な世界よりもさらに複雑な話であった。
ミカエル、生前の名前:小野田美香が生きていた日本という国があるのはユーラシア大陸の横にある小さな列島。
そのユーラシア大陸は地球という惑星に存在し、その惑星は天の川銀河に存在する。
さらに天の川銀河は数十個もある宇宙のうち、ヴェータという名前を付けられた宇宙に位置する。
その宇宙というものでさえ、この世界の一部でしかないとのことであった。
「だから、ここもこの世界の一部でしかないのだが…?」
「ちょっと待ちなさいよ。案内人さん、私はそんなことどうだっていいの。」
「ほうほう、では何を知りたい?」
「そもそも、ここから脱出するにはどうすれば良いの?」
案内人は少し胸を張るようにして、得意げに案内し始めた。
「そうだったな、君は何も知らない。だから俺も、君に世界の話をしてやろうと思ったのだが、君はそんなことはどうでも良いと…。そして、何でもいいからこの部屋から出してくれと…。良いとも良いとも、出してやろう。では俺の手を握ってくれ。」
「え?」という暇もなく、案内人はミカエルの手を無許可で掴み、先程と同じように腕を大きく回し、円を描くように動かし、「じゃんぴいでぴい」と唱えた。
到着したらまた、少し違った雰囲気が漂っていた。
そこは先程までの真っ白で何もなく、どこからが始まりでどこまでが部屋の終わりの部分なのかが分からないような感じでもなかった。
その部屋は真四角で、部屋の角を隠すように色取り取りの植物が壁や床一面に引っ付いている。
どうやら出入り口となるような扉はない。
自分がどのようにしてこの部屋に来たのかは分からない。
しかし、先程までの真っ白で何もない、どこか人を不安にさせるような場所とは全く違う。
部屋の中央には茶色い木材でできた小さな椅子があった。
部屋には案内人とミカエル以外には誰もいない。
(一体、ここは何のための部屋で、何をするためにここへ案内されたのかしら。)
不安な表情を浮かべるミカエルの気持ちに反して、案内人はあまりに残酷である。
「じゃ、俺の仕事は終わったから、ここでちょっとだけ待っててね。」
案内人はミカエルにあっさりと別れの言葉を継げると、今度は一人で何も唱えることなくジャンプするとどこかへ消えた。
煙のように、消えた。
「え、えっ…」
ミカエルはただ、そこに佇むことしかできなかった。
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