第11話 公爵家の魔導具

 パイロープ学園での出来事から一週間。

 私はアウイナイト公爵家の敷地にある、私の作業小屋にいる。というのも、私があまりにも料理を作りまくるので、料理長含め、料理人さん達の気を散らしてしまっている……気がしている、私が。

 なので、父に相談し、料理はもちろん、ポーションの作成やシルバーとチャロアイトとの会議が出来る場所がないか聞いた。

 すると、私専用の家を敷地内に作ってもらえることになった。ちなみに、費用は商会で得た収入から利益を差し引いた私のお給金分から支払った。

 家……と私は思っているが、公爵家の人達からしたら、小屋らしい。

 どう見ても、前世の平屋一戸建ての家ですが。

 二、三人で料理しても余裕な台所、作業が出来る部屋一つ、寝泊まり出来るような部屋が三つ、トイレ、お風呂付き。


 家じゃん!


 それが、私の初見の感想だった。

 そして、作業が出来る部屋は想像より広く、とても有り難かった。

 今後、学園でもだけど、魔導具も作りたいと思っていたので、色々捗る。

 本当は公爵領の何処か隅っことかに建ててもらえたら、そのままそこに住もうと思っていたけど、流石に家族含む、公爵家の使用人全員に止められた。

 なので、学園卒業後に隅っこに建てようと心に決めた。

 そんな訳で、所謂、公爵家の皆さんが言うところの作業小屋で、私は新たに料理を作っている。

 今日は第一王子が来るらしく、どうしても私にお菓子を作って欲しいと兄を通してお願いをされてしまい、仕方なく作っている。

 作っているのはパンケーキだ。

 クリームという存在が、この乙女ゲームにないという事実が判明し、牛乳とバターを代用してクリームを作った。

 果物もあると、母やアメジスト、ルチル、ダイアモンド等、女性陣が喜ぶので苺や葡萄、蜜柑、桃等を切る。

 パンケーキの生地も出来ているので、フライパンを温めて、焼く。

 大量にパンケーキを焼き、皿に乗せていく。


「ラ、ラピス様……! 何ですか、この甘い香りの美味しそうなお菓子はっ!」


 ルチルが目を輝かせて、パンケーキに魅入る。


「あ、これはパンケーキというお菓子だよ。パンケーキ自体にも味があるから、そのまま食べるのも良し、クリームや果物を乗せて食べるのも良し。塩味が欲しいなら、ハムや卵を乗せても良いよ。その場合、朝食になりそうだけど」


 蜂蜜やメイプルシロップ、アイスクリームがあれば、更に美味しいのだけど。

 蜂蜜は高級品でレア物らしく、公爵家でもなかなかお目に掛かれないそうだ。

 公爵領の土地に余裕があれば、養蜂場とか作れないかな。

 それか、楓の木。それがあれば、メイプルシロップが作れる。

 今度、公爵領の木々の種類を調べよう。

 アイスクリームは……作れるな、うん。

 少し、暑い時期になってきたし、今から作ろう。

 早速、牛乳、砂糖、卵を用意する。

 鍋を取り出し、牛乳、砂糖、卵を入れてよく混ぜ合わせ、弱火で熱する。

 不思議そうにルチルが覗き込む。

 煮立たせないように木べらでかき混ぜながら、とろみがつくまで熱する。

 とろみがついたので、火から下ろして、漉し器で漉し、バットに流し入れる。

 粗熱を取り、混ぜ合わせる。

 この時に、バニラエッセンスがあれば良いんだけど、アウイナイト公爵家にはないので、諦める。この世界にあるかな。

 冷凍庫で二時間ほど冷やし固める……ところだけど、氷の魔法を使って時間短縮する。

 急速に凍らないように、魔力を調節してゆっくり凍らせる。

 本当ならバットからアイスクリームを掬うアレ……確かアイスクリームディッシャーだっけ? アレで掬うんだけど、ないので大きめのスプーンで代用する。

 私も味見したいので、二枚のお皿にアイスクリームを乗せ、一枚をルチルに渡す。


「これもお菓子だよ。冷たいけど、食べてみて」


 お皿を受け取ったルチルは物珍しそうにスプーンで掬い、ぱくりと口に運んだ。

 すぐに目を輝かせて、ルチルは私を見る。


「ラ、ラピス様……。何ですか、この素敵なお菓子!」


「これはアイスクリームって言うんだよ。味はどう?」


「アイスクリームと言うのですね! あ、味はですね、とっても美味しいです! 口に入れた瞬間、ふわっと溶けて、でも、甘い味が口の中に広がって……。冷たいお菓子があるなんて思いませんでした! これ、私は好きです! それに、これから夏になりますし、この冷たいお菓子はこの時期にはとても良いかと思います」


「そんなにベタ褒めなことを言ってくれるとは思わなかったけど、気に入ってくれて嬉しいよ」


 言いながら、パンケーキの上にクリーム、果物、アイスクリームを盛り付けていく。

 それをルチルが目を輝かせて、見つめる。

 兄、第一王子、何故か一緒に来ている将軍の息子の分の皿を盛り付け、残ったパンケーキやクリーム、果物、アイスクリームは空間収納魔法で収納しておく。空間収納魔法で収納している間は品質も維持して、時間が止まって溶けないからとっても便利だ。


「今度、時間があれば、果物の味のアイスクリームを作ろうかな……」


 ぼそりと呟くと、ルチルが勢い良く私を見た。


「その時は是非、私を呼んで下さい! 事前に必要な果物を仰って下されば、調達して参りますから!」


「うん、分かったよ。その時は宜しくね」


 相変わらずの無表情で頷くけど、長い付き合いのルチルは私が楽しみだということが分かるようで、笑顔で頷いた。








 パンケーキをワゴンに乗せて、兄の部屋の扉を叩くと、すぐ応答する声が聞こえた。


「失礼します。兄上、お待たせ致しました」


 ぺこりと頭を下げて、ワゴンを兄達が座るテーブルに運ぶ。

 テーブルにパンケーキを乗せたお皿を私がそれぞれの前に置き、カトラリーをルチルが置いていく。


「第一王子殿下、ロードナイト侯爵令息もいらっしゃいませ」


「あ、ああ。ラピスラズリ卿、お菓子を作って欲しいとお願いをして申し訳ない」


 本当にね。当日の、いきなりのお願いでこちらは準備が大変だった。材料がなかったらどうするんだ。そんなにすぐ簡単に準備出来ると思ってるのか。


「いえ。要望を出されるのでしたら、出来れば、当日ではなく、事前に頂きたいですね。材料がない場合もありますので」


 ちくりと告げると、第一王子が怯んだ。


「う、も、申し訳ない。次は気を付ける……。ところで、このお菓子は何だ?」


「はい。パンケーキといいます。今回は、甘くしていますが、塩味にすると朝食にも出来るお菓子です。パンケーキ自体に味を付けてますので、そのまま召し上がってもいいですし、この白い、クリームというのですが、そちらをパンケーキの上に乗せたり、果物を乗せても美味しいです。もう一つの丸い、白いお菓子はアイスクリームといって、冷たいお菓子です。こちらもそのままでも美味しいですし、パンケーキに乗せても美味しいです。宜しければ、どうぞお召し上がり下さい」


 説明すると、兄、第一王子、将軍の息子が食い入るようにパンケーキとアイスクリームを見つめる。


「わ、分かった。ありがとう。早速、頂こう」


「俺にまで作ってくれて、ありがとう。ラピスラズリ卿」


 将軍の息子のゴールドが私にお礼を言う。

 いや、別にいいけど、その言い方を考えないと、誤解を生むよ。というか、兄や第一王子にお菓子があって、兄のお客様として来ている将軍の息子にはお菓子がないってことをすると思うのか。一応、私も公爵家の子供だし、そんな嫌がらせする訳がない。


「いえ。今回、初めて作ったものですので、後程、感想を頂けるとありがたいです。それでは、私はこれで失礼致します」


「え、ラピスラズリ卿、もう行くのか?」


 第一王子が目を丸くして、私を見上げる。

 何で、食べ終わるまでいると思ってるの?


「召し上がるまで、私がいる必要はないかと思いますが……。それに、今から込み入ったお話をなさった場合、部外者の私がいたら殿下がお困りだと思いますが」


「……さらりと躱すの本当に上手いよな……。そ、そうだな。すまない。後で、感想を言わせて欲しい」


「かしこまりました。後程、伺います」


 ぺこりと一礼してから、ルチルと共に兄の部屋から退室した。










 そして、私は何故か父に呼ばれ、父の執務室に来ている。

 執務室の扉を叩き、中から父の応える声が聞こえ、扉を開ける。


「失礼します。父上、お呼びでしょうか」


「ラピス、突然呼んですまない」


 私を見るなり、何故かソファに座る父が嬉しそうに微笑んだ。

 父に促され、対面のソファに座る。私の斜め後ろにルチルと、途中で合流したジャスパーが立つ。


「いえ。如何されましたでしょうか」


 ……父に何があった? 嬉しいことでもあったのだろうか?

 表情は相変わらず動かないが、怪訝な雰囲気を出していたのか、父が苦笑した。


「ラピスに必要だと思う物をやっと見つけたんだ」


「私に、必要だと思う物、ですか?」


「ああ。これだよ」


 そう言って、父の執事のアイアンが小さな箱を持って来る。

 正方形の小さな、シンプルだけど、落ち着いた色合いの黒い箱で、高価な物が入っていそうだ。

 前世がブラックな職場で、社畜の如く働かされた一般庶民だったので、高価な物はどうしてもまだ慣れない。

 なので、男性の姿でも、女性の姿でも、アクセサリーは全く着けていない。

 ルチルには「せめて、せめて、ラズリ様の時だけでもアクセサリーを……!」と毎回言われる。

 着飾るのは兄や妹で良いと思う。


「……父上、こちらは?」


「我がアウイナイト公爵家に伝わる魔導具だ」


 そう言って、父は黒い箱を開けて、私に見せた。

 黒い箱の中には、金色の細い金属に小さな瑠璃色の宝石が嵌められた、シンプルなデザインのブレスレットがあった。


「魔導具、ですか?」


「ああ。これはアウイナイト公爵家の百年に一度、五歳の時に性別が逆転した子供のみが使える魔導具だ。私の祖父からそういう魔導具があると聞いていた物なのだが、二百年くらい前の当主がうっかり宝物庫内で紛失し、行方不明だった。アウイナイト公爵家の宝物庫は全ての場所を書類で残しているが、そのあるはずのところになかったから、隅から隅まで探して、やっと見つけた」


「どのような魔導具なのですか?」


 父の説明を聞きながら、私はブレスレットを見つめる。そのブレスレットから魔力を感じる。どのような効果があるのか、色々な魔力が複雑に絡んでいて私には分からない。


「このブレスレットを性別が逆転した子供が着けると、着けている間、性別が元に戻るというものだ」


 父の言葉に、後ろに立つルチルとジャスパーが息を飲む。


「それは、つまり、私が着けると、着けている間は性別が男性になるというものですか?」


 そんな魔導具があるの?

 もしかして、乙女ゲームでも私の推しのラピスラズリは着けていたの?


「そうだ」


「何故、私に必要と父上は思われたのでしょうか」


「第一王子殿下からドレスを度々贈られているだろう? 毎回返却しているが、困っていただろう?」


「そう……ですね」


 本音は困っているというより、とても怖かった。

 だって、抱き締められてもいないのに、サイズがピッタリって怖くない? 

 まぁ、抱き締められるような隙は作りませんが!


「困っているなら、このブレスレットを着けた状態で何度かお会いすれば、第一王子殿下もラピスが男性だと分かって下さるかと思ってな」


 言葉は丁寧だが、父の目が鋭くなった。

 娘の恋人に対して見る、父親の目だ。

 私は結婚しないけど。


「そうなればありがたいのですが……。そのブレスレットを着けると性別が戻るとのことでしたが、魔法でいう幻惑のような物なのですか?」


「二百年も行方不明だった物で詳しくは分からないが、見た目が戻ると祖父から聞いたことがある。祖父の弟がラピスと同じだったらしく、このブレスレットを探していたと聞いた。まさか宝物庫の要封印の場所に置いてあるとは思わなかったが」


 え、このブレスレット、要封印って、何で?

 というか、うちの宝物庫に要封印スペースなんてあるの?

 それはそれで怖いんですけど。


「……それは、マズイ物ではないのですか?」


「アウイナイト公爵家に伝わる書物には、そのようなことは書いていなかったが……」


 父もそんなものを私に渡してもいいものか悩んでいる。

 父の後ろでアイアンも眉を寄せている。彼は私の二人目の父親のような人で、あちらも実の子のように思ってくれている。

 そんな二人を見つつ、悩んでも仕方ないので、小さな正方形の箱の中のブレスレットに手を伸ばす。


「悩んでも仕方ないので、触ってみますね」


「あ、ラピス……!」


 父が慌てた声を出すが、それより先にブレスレットに触れた。

 瑠璃色の石がきらりと小さく光ったが、特にそれ以外は何も起こらず、手に持っても何も起こらなかった。


「大丈夫ですか、ラピス様」


 アイアンが心配そうに、私を見る。


「はい。特に問題ありません。試しにブレスレットを着けてみますね」


 頷きながら、左手首にブレスレットを嵌める。

 すると、瑠璃色の石がまた光るだけだった。


「どうだ、ラピス?」


「私自身、特に違和感はありませんが、外見的にはどうですか、父上」


 そう尋ねると、父とアイアン、ルチル、ジャスパーが私を見つめる。


「ラピス。少し、背が伸びたか?」


「背、ですか?」


 ブレスレットを着けただけで、背、伸びたの?

 まぁ、まだ十一歳だし、身体的な特徴はもう少し大きくならないとそこまで変化はないし、外見を見てもどう変わったかと聞かれても難しいよね。


「もう少し、年齢が上がらないと分からないですね。でも、特に異常もないようなので、もう少し大きくなってから使ってみます」


 ブレスレットを外し、元の箱に戻しながら言う。

 主にパイロープ学園で。

 第一王子との遭遇率も今以上に上がるだろうし、何処で私の性別が逆転したという話が漏れるか分からないし。


「父上、貴重な魔導具を探し下さって、ありがとうございます」


「何か異常や違和感があったら、私はもちろん、アイアンにも伝えなさい」


「はい、分かりました」


 お辞儀をして、私とルチル、ジャスパーは父の執務室を後にした。









「良かったですね、ラピス様。便利な魔導具を手に入れましたね」


「第一王子殿下が離れてくれることを俺も真剣にお祈りしておきますね、ラピス様」


 ルチルとジャスパーが笑顔で言う。当人である私より、とても嬉しそうな笑顔と声音だ。


「学園に入学する頃には、私の外見も今よりは女性寄りに少しずつなっているだろうからね。戸籍を偽っている分、学園在籍中はこの魔導具で誤魔化して、卒業後は見つからないようにしたいところだね。どちらにしても、言い寄られないようにしたいよ」


「私としては、どちらの性別のラピス様のお召し物を更に考えられるのが堪らなく楽しみです」


 ルチルの顔が妄想でニヤけている。

 気持ちは分かるけど、本人の前では恥ずかしいから妄想しないで。

 五歳の時は、私が着るドレスが想像出来ないとか言っていたのに、今はどちらも想像出来るのか。


「……程々にね。そろそろ、兄上達もお菓子、食べた頃かな」


「ご感想を聞かないといけませんね」


「第一王子の感想なんて参考にもならないですよ」


 ルチルが苦笑しながら言うと、ジャスパーが辛辣な言葉を吐く。


「その感想によっては、商会で出してもいいかなと思ってるからね。もちろん、他の人達の意見も聞いてだけど」


 私がそう言うとジャスパーは尚も不満気だ。

 彼と第一王子の間に何かあったのだろうか。

 あまり、接点がない気がするけど。






 それから、兄の部屋に戻ると、兄、第一王子、将軍の息子が目を輝かせて私を見ていた。


「ラピス! このお菓子、また作ってくれる?! とっても美味しかったよ! このパンケーキは日持ちする? お弁当に入る?」


「兄上、落ち着いて下さい。宜しければ、お弁当用にパンケーキを作りますよ。お弁当に、ということは気に入って下さったということですよね。味も問題ありませんでした?」


「問題ないどころか、程良い甘さで、私好みだよ! 

果物とクリームを乗せて食べるのも、冷たいお菓子を乗せて食べるのも美味しくて、色々な物を乗せて食べてみたいよ。塩味にすると朝食にも出来るって言ってたよね? 明日の朝食に出してもらえる?」


 兄が凄い勢いで私に感想を言ってくる。

 かなり気に入ったようだ。今度、ダイアモンドにも作り方を教えてあげよう。きっと彼女も喜ぶ。


「分かりました。明日の朝食用のも作りますね」


「ラピスラズリ卿。とても美味しかった。果物と冷たいお菓子を乗せて食べてみたのだが、本当にとても美味しかった。冷たいお菓子の味を含めてラピスラズリ卿を思わせて、俺はこの冷たいお菓子は好みだ」


 目を輝かせて、謎の比喩表現をして第一王子が私に言う。

 つまり、冷たいのは氷の貴公子の無表情で、甘いのはその性格と言いたいの?

 いや、アイスクリームを私に喩えるなよ。

 寒気しかしないので、この場合はスルーに限る。


「美味しかったのでしたら、良かったです。ロードナイト侯爵令息は如何でしたか?」


「……またさらりと躱された……」


 ぼそりと第一王子が呟くのが聞こえたが、知らない振りをする。


「とても美味しかった。ありがとう。もし、良ければ、また作って頂けないだろうか」


 珍しくストレートに将軍の息子のゴールドが感想を言ってくれた。今後もそういう言い方にして欲しい。


「気に入って下さって良かったです。また来られた際には作りますね。あ、もちろん、事前に仰って下さいね。材料がない時もありますので」


「分かった。その時は事前にセルレに通しておくよ。このパンケーキは他にも食べ方はあるのだろうか?」


「そうですね。今回は材料がなかったので、お出し出来ませんでしたが、蜂蜜をかけたり、パンケーキとパンケーキの間に果物とクリームを挟んで、サンドイッチ風にしてみたり、塩味だと薄く切った肉を入れたりと色々ありますね」


 肉以外だとベーコンやツナとか、目玉焼きとかもある。ツナはないけど、明日の朝食に出してみよう。


「今度は塩味のパンケーキもお願い出来るだろうか……?」


 珍しく、といってもあまり知らないが、ゴールドが私に期待に満ちた目で尋ねる。


「分かりました。次にこちらにいらした時に作りますね」


「ありがとう、ラピスラズリ卿」


「お、俺にも作って欲しい。それと、他にもまだお菓子があるのなら、是非それも」


 第一王子が身を乗り出すように、私とゴールドの会話に入ってきた。

 それを兄が舌打ちしている。不敬になるから、こちらは内心冷や冷やだ。


「はぁ、事前に連絡を頂けると助かります」


「殿下、ゴールド。弟が困っているので、そろそろ宜しいですか?」


 兄が良いタイミングで助け船を出してくれた。


「そうだな、すまない。今日は美味しいお菓子をありがとう、ラピスラズリ卿」


「いえ。それでは失礼します」


 お辞儀をして、私とルチル、ジャスパーは兄の部屋から出た。







 それから、夕食のデザートとして、パンケーキとアイスクリームを出すと、両親と妹、公爵家の使用人達も大喜びで食べ、食卓のメニューになった。

 そして、父から渡された、魔導具のブレスレットはパイロープ学園の入学試験で効果を発揮することになる。

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