第8話:怪獣 VS 米国海軍
帝都東京の軍令部本部
重厚な木造建築の会議室に、軍服を着た将官たちがずらりと並ぶ。
机の上にはサイパン島からの最新の偵察報告が並べられ、参謀たちは緊迫した表情で報告書を睨んでいた。
「サイパンからの瑞雲偵察機からの報告ですが、米機動部隊はマリアナ方面ではなく南へ……」
「ふむ、……やはりアメリカはマリアナを狙わず怪獣退治を優先したということか」
「それとだが、私が気になるのがこの"巨大生物"の存在が、わが軍にとっての味方であればいいがもし、我が国に襲い掛かってくればどうする?」
ウルシー環礁周辺で敵潜水艦が通信を絶ち、直前の報告に"怪物"とあったという。
静寂が会議室を支配する。
信じがたい話だが、米軍が総力を挙げて戦うほどの"怪獣"の存在は確かのようである。
「現時点で我が方にとっての脅威とは言えませんが、情報の収集は不可欠です」
「うむ、我が国の命運を左右する可能性がある。我々は傍観者であってはならん! 状況を見極めよ」
「もし、その怪獣が米国海軍を破って我が国に襲い掛かるとなれば横須賀から出航した我が艦隊を以て退治する。よって、サイパンおよび南洋方面の駆逐艦隊に極秘命令を下す。米軍の動向を監視し、可能な限り状況を把握せよ」
静かに頷く将官たち。
決定が下されると、速やかに伝令が走り、電報が打たれた。
東京の軍令部は、これより未知なる戦いの観測を開始する……。
♦♦
1944年 ウルシー環礁南方海域 ……深夜。
静かな海に突如として鳴り響く「総員、戦闘配置!」の警報。
ハルゼー提督率いる米機動部隊は、未知なる怪獣の出現に対し、迎撃戦闘を開始した。
全攻撃隊、突撃準備!
F6Fヘルキャット、TBFアヴェンジャー、SB2Cヘルダイバー合わせて800機の群れが怪獣に向かっていく。
隊長機の無線が鳴り響く。
「第一波攻撃隊、全機発艦完了! 目標へ向かう!」
夜闇の向こう、海面が異様なうねりを見せていた。
巨大な影が海を切り裂き、"それ"が姿を現した。
怪獣、出現!
月明かりに照らされたその怪獣の姿は報告にあった以上の100メートルを超える異形の巨体が海上に浮かび上がる。
「こ、こいつ……報告よりでかくなってないか?」
甲殻のように硬質な表皮、眼光の奥で赤黒く光る何か。
攻撃隊指揮官が無線で命令する。
「目標を視認! ク、クソッ……化け物だ……!」
だが、指揮官の叫びと同時に、怪獣の目が光る。
次の瞬間、怪獣の口から青白い閃光が走る。
……そして、凄まじい光線が吐き出される。
ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!
空中にいた数百機が一瞬で灼熱の塊となる。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
「機体が……熱い……助けて……!!!」
次々と機体が爆炎を上げ、海へと落ちていく。
急降下爆撃を敢行しようとしたヘルダイバー隊も、怪獣の巨大な腕が薙ぎ払うように動くと、まるで紙くずのように粉砕された。
攻撃開始からからわずか数分で、米軍航空部隊は消滅した。
空母“エンタープライズ”のブリッジでは、ハルゼー提督が愕然としていた。
「わが軍の全攻撃隊……応答なし……全滅しました!」
「そんな馬鹿な!! たった数分で!? 化け物め……」
再度攻撃をするかそれとも撤退すべきか?
だが、次の瞬間、レーダー手が叫ぶ。
「閃光確認! 怪獣がこちらに向かってきます!」
怪獣の巨大な影が、夜の海を割りながら米艦隊へ向かって進撃を開始した。
人類と怪獣の戦いは、次の段階へ突入しようとしていた……。
米海軍の初戦による全攻撃隊は、わずか数分で全滅した。
だが、戦闘は終わらない。
「艦隊、砲戦準備!」
ハルゼー提督は迷わず巡洋艦・駆逐艦部隊に突撃命令を下した。
米機動部隊の航空戦力が無力化された以上、次に頼るのは艦砲射撃しかない。
砲雷撃戦、開始!
先頭を突き進むのは、駆逐艦“ジョンストン”。
艦長、アーレイ・バークが叫ぶ。
「奴を止めるぞ! 全砲門、最大発射!」
"ドォォォォォォン!!
駆逐艦部隊の127mm速射砲が一斉発砲!
軽巡洋艦“クリープランド” の152mm砲弾が怪獣の胴体に命中!
重巡“インディアナポリス” の203mm砲弾が巨体に炸裂!
黒煙が立ち込める。
だが……。
無傷の怪獣……砲撃の煙が晴れると、怪獣はそこにいた。
……ほぼ無傷だった。
水を弾く硬質な甲殻、無数の棘が砲弾を弾き返す異常な動き……そして、怪獣の目が冷酷な光を放つ。
「……駄目だ……効いていない……」
そして、怪獣は反撃を開始した。
蹂躙の時間……
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!!」
怪獣が耳を裂くような咆哮を上げる。
次の瞬間!!
怪獣の巨大な腕が振り下ろされ、駆逐艦“ジョンストン” に直撃!
船体が真っ二つに裂け、炎とともに海へ沈む。
長い尾が クリープランドを絡め取る!
巡洋艦の船体が軋み、甲板上の兵士たちが叫びながら海へ投げ出される。
高熱の閃光が“インディアナポリス”に直撃!
艦橋が吹き飛び、船体の半分が炎に包まれる。
その他の駆逐艦、巡洋艦が次々と撃沈されていく。
米艦隊の精鋭たちは、ただの"獲物"のように蹂躙されていた……。
空母“エンタープライズ”のブリッジではハルゼー提督は青ざめながら震える声で呟く。
「神よ! ……なんという試練を我が国に!」
駆逐艦、巡洋艦部隊はすでに半数以上が沈められ、怪獣はさらに艦隊中央へと迫ってくる。
このままでは、戦艦部隊と空母群も壊滅する。
絶望的な状況の中、ハルゼーは最後の決断を迫られる。
伊400外伝:大怪獣 VS 連合艦隊&伊400 @vizantin1453
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