第7話:米艦隊出撃!
静かな夜、星明かりの下で米国潜水艦“ボーフィン” が哨戒中に水中ソナーが何か巨大な物体を探知する。
「艦長、何かがいます……通常の艦船ではありません! 動きが異常に速いです!」
「敵潜か? 確認しろ」
突然、闇の中から巨大な影が現れ、潜水艦の艦体にぶつかる。
船体が悲鳴を上げるように軋み、警報が鳴り響く。
「提督に緊急送信! "巨大生物、繰り返す、巨大生物を発見! 正体不明、真珠湾を襲った例のモンスターの可能性」
次の瞬間、怪獣の巨大な触手が潜水艦を絡めとり、船体が裂ける音が響く。
通信は突如、砂嵐のようなノイズにかき消される。
♦♦
星が瞬く静寂の海。
しかし、“ボーフィン”からの緊急通信が司令部の空気を一変させた。
「提督! 潜水艦“ボーフィン”からの通信が途絶しました。最後のメッセージですが『巨大生物を発見、正体不明、真珠湾の怪物の可能性』 そこで切れました!」
ハルゼー提督は険しい表情でつぶやく。
「冗談では済まされん……」
彼は司令部の将校たちを見渡し、決断を下す。
「全艦隊、即座に迎撃準備! 空母から索敵機を上げ、駆逐艦は前衛を展開せよ! 戦艦部隊、主砲を怪物の迎撃に備えろ!」
ウルシー環礁に停泊していた巨大艦隊が、次々と動き出す。
空母“エンタープライズ”“エセックス”を始めとする各空母からF6Fヘルキャット戦闘機が次々と発艦。
駆逐艦部隊 が白波を蹴立てながら前方へ急行する。
戦艦“アイオワ”級4隻の巨砲が夜空を背景にゆっくりと仰角を取り出撃してその後に真珠湾から引き揚げられた戦艦部隊等が続く。
雷鳴のような甲板の振動が艦隊を包みこむ。
兵士たちは緊張した面持ちで戦闘配置につき、海の闇の奥から迫る怪物の影を待ち構える。
♦♦
一方、夜の太平洋を滑るように進む一機の偵察機帝国海軍 “瑞雲”
エンジンの低い唸りを響かせながら、パイロットと偵察員を乗せた機体は慎重に高度を上げ、南方の海を見下ろしていた。
双眼鏡を覗きながら前部搭乗員が尋ねる
「敵影は?」
「……米機動部隊、確認! 凄まじい大艦隊だが、おかしい……進路がマリアナ方面ではなく、逆方向に向かっている!」
夜の海に広がる巨大な艦隊のシルエット。
無数の航行灯が闇に点在し、甲板上の動きがかすかに見える。
空母の甲板 では、艦載機の発艦が続いている。
駆逐艦群 が陣形を組み、前方へと疾走。
戦艦の巨砲 が静かに目標へと備えられていた。
「こいつら、いったいどこへ向かうつもりだ?」
この動きは明らかに通常の作戦とは違う。
もしマリアナ方面での戦闘を想定しているなら、進路が逆なのは不可解だった。
最もこの時点では、本土の軍令部のみが真相を知っていたのである。
「敵が別の目標を持っているのか……いや、あるいは……」
不吉な予感が胸をよぎる。彼はすぐに無線を手に取った。
「こちら瑞雲偵察機、敵機動部隊の動向を報告する! ウルシー環礁より全艦出撃、しかし進路はマリアナ方面ではなく南方! 繰り返す、敵は南方へ向かっている!」
電波の向こう、基地からの応答が返るまでの静寂。
月明かりに照らされる巨大な艦隊は、まるで何かを追うかのように進み続けてい た……。
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