第2話つなぐ過去と手

「あの……ホントに家までついて来るんですか?」


「当たり前じゃん!友達なんだから!」


「いや……僕知らないですよ……」


夜、八時頃。

一人、河川敷を通り家へと帰る中、その後ろを無邪気な子供のようについてくる女の子がいる。


絹のような白色の髪をなびかせながら、スキップをする様にルンルンと楽しそうな雰囲気を醸し出す彼女。

1026回繰り返して、僕はこの人を知らない。


時は遡ること3時間前。学校でもつ鍋を作っていた時の事だ。

もう少しで鍋が煮え立ちそうな時に彼女がいきなり喋りかけてきた事が始まりだ。


どこからともなく僕の背後に現れ、誰にも気ずかれずに僕だけに話しかけた。透明人間とかそんなのじゃない。


彼女は、しっかりと他の人に見えているし、話し声も他の人達にしっかりと聞こえていた。

そのせいでもつ鍋はバレ、先生に没収されてしまったがな。


みんな不思議そうにしていたよ。いきなり変な人がいるんだから。

先生は一度学校の外へと出したが、いつの間にか僕の後ろにいた。


その時から彼女は、僕の後ろをずっと着いてきている。

食事の時も、授業の時でも所構わず、ずっと近くにいた。あまつさえトイレにまで入って来そうになった。

さすがに止めたが、それでも何度か入ってきそうになった。


はっきりいってこの人は異常だ。

後ろを着いてくるばかりで何もしない。妖怪みたいな奴だ。いや……、本当に妖怪なのかもしれない。


だがそんな彼女だが、僕は不思議と嫌な感じはしない。


毎日が退屈だったせいか、こんな突如現れた異常ともいう状況に体が反応してしまっている。むしろ喜んでいる気さえする。


正体不明の彼女。実に面白い。

だが、僕は彼女の正体を知りたいとは微塵も思わない。


彼女を知れば、この退屈な日々は無くなるだろう。だが彼女に関われば、僕の今の状況がより悪くなってしまう。そんな気がしてならない。


「私の名前はユリ!よろしくね!」


ご挨拶と共に、いつの間にか僕の横にいる彼女。


いつの間にいたの?

なんでこの子は勝手になんで自己紹介してんの?僕今、君を知りたくないって言ったばっかりなのに……。

仕方がない。一言挨拶でも済ましてさっさと帰ろう。


「椿です、さようなら」


そう言って僕は全速力で逃げ出した。

だが、彼女はついてくる。結構なスピードを出しているぞ。それでも引き剥がせないなんて……。


「君!ループしてるでしょ!5月1日を!私も!私もなの椿くん!」


いきなり彼女から出てきた言葉。僕はその言葉に足を止めるしか無かった──────────。

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時間を戻す時、世界はもう壊れている 三冠食酢 @natinati

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