第125話 不思議で面白い
「チャラって言ったけど、本当はローロフ家に借用書が移っただけ。
それでもすぐに返せって迫ってこないし、返済計画も話し合って決めさせてくれたから感謝しかない。」
「……よかったな。」
きっとローロフ家に有利な穴があるのだろう。
いざとなったらその穴を突いて上位に立って……考えただけでも恐ろしい。
あの家の当主は国王と宰相ですら恐れる存在、金が関わる事に関しては最強の存在だ。
間違いなくこの国で敵対したくない貴族序列1位。
「あの人が助けてくれたから、この国を守る為にもディカマン侯爵が見た呪術の対策する。
まずは術者を探して捕まえる、そして拷問する。」
「多分だが術者はもう死んでる、私が無理矢理呪術を解除したので呪術は術者に返ったからな。」
「むぅ……」
「それと呪術師に対して拷問は危険だぞ。」
なぜ拷問する工程を挟んだのかわからないが、呪術には感情を利用する物もあるから呪術師に憎悪を抱かせるのは危険なのだ。
「対抗手段を得るにはまず呪術のことを知らないといけないし、手っ取り早く拷問で聞き出そうと思ってた……」
「この学院の教師ならある程度の知識を持っていそうだが、少し聞いて回ってみたらどうだ?」
「それは嫌、授業出ろって五月蝿い。」
当たり前だろ、私みたいに免除されてる生徒の方が少ないからな。退学したら貴族の席無くなるし、ある程度は出席した方がいいが……
まぁ説得出来る気はしないし、そこまで面倒を見る義理も無い。
「ん?あっ、呪術関係の本だ。」
「よかったじゃないか、それを読んで国の為に対策を考えられるぞ。」
「禍々しい雰囲気を感じるけど、これ開いて大丈夫?」
表紙に呪術霊魂と書かれたヤバイ雰囲気を感じる本を渡してきたが、確かに開けるのはダメな気がする。
嫉妬の直感は開くなと主張し、魔法の鑑定は弾かれ、生き物としての本能が早く手放せと警報を鳴らしている。
「開いてみて。」
「ふざけんなお前。」
開いたら最後、面倒な呪いを貰うだろ。
どうしても読む必要があるなら、おそらく対抗出来る嫉妬の能力を自由に使える私1人の時に開く。
「人の皮膚で作られた本があるって昔聞いたことがある、作成者の愛した相手の皮膚でどのように生きたかが書いてあるらしい。」
そんな怖い話どこで聞いたんだ。
「……帰る。」
「急だな。」
「うん、お昼食べてないからお腹空いた。
また明日ここで合流しよう、この本は……あっちの方に適当に投げておく。」
ドスッ
「ヨシ。
またね、ディカマンさん。」
本当に投げ捨てて出口の方へと去って行った。
「……なんと言えばいいかわからないが、不思議で面白い奴だったな。」
解放された嬉しさと謎の寂しさを感じながらも、本来の目的である大罪に関わる本と歴史関係の本を探すのだった。
──王と財務管理官──
「王国内で無能と教会派の商人達の処分が終わったわ。
幾つかの貴族家に首輪もつけたし、教会から妨害をされても資金面で飢えることは無いでしょう。」
「流石だローロフ卿、貴公の忠義に感謝する。」
「その変な言葉遣い、気持ち悪いから辞めて下さる?」
ズバッと言うな。
「気持ち悪過ぎて国を乗っ取ってやろうかと思いました。」
「すまんすまん、メンゴ。」
それなりに優秀だったから地位を与えたが今となっては我が王国に必須の人材となり、優秀過ぎるが故に危険な反乱分子になるところでもあった。
流石はこの私、国民1人1人まで細かい情報を把握する国王の鏡。
「それで教会を潰す方法は決めているのですか?」
「それがな、少々厄介な事情を抱えていて教会に構っている暇がないんだ。」
「ミゲアルもそちらの件で動いていると?」
「あぁ。」
真に信頼している者達、私とミゲアルは弱体化の調査と対策、カリルとラリメルは王都と王都周辺での敵対組織への牽制、武力の面で多少の不安はあるものの今1番自由に動けるのはスーザン・ローロフだけだ。
「まさかとは思いますけど、私に1人で教会を抑えろと?」
「そこまでは言わない、だが重りをつけさせて簡単には動けないようにして欲しい。」
「……わかりました、平民の教会へのお布施を抑えましょう。3日ほどくださいな。」
3日で終わるのか、凄いな。
簡単に言ってるがかなり難しい、多分だが物価を反発が起きないギリギリまで上げお布施をする余裕を無意識に消させるだろう。
流通、金、平民、貴族、全てと向き合い操作したスーザンだからこそ出来ること。
「あっそうだわ、陛下に1つお願いがあるの。」
「なんだ?」
「今ディカマン卿、カリルは学院に通っているでしょう?次の長期休暇の半分ほど私と行動を共にするように言って欲しいの。」
「それは構わないが何故だ?」
まぁ、長期休暇までに弱体化の原因が分かれば自由に動かすんだが、場合によってはカリルにも護衛を付ける必要があるな。
「ディカマン領の金の流れが悪くはないのだけど少し効率が悪いの、だから私が直接指導をしてあげようと思って。」
「優しくやってやれよ。」
「当たり前です、この国で私以上に金関連に詳しく優しい人は居ませんよ。」
それ詳しいの部分が殆どを占めて、優しいがほぼ0に等しいやつじゃね?
「では私はこれで。あっそうだ、ラリメルもカリルに会いたがってましたよ。」
カリルは他人の視線があったから、あの2人と軽い気持ちで会話する機会が無かったんだよな。
久々に皆で食事でもするか!
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