割れるパーティー
第123話 図書室
入学2日目から決闘を行うことで一躍注目を集めていた私だが、決闘後しばらくの間は奴の腕を消した時に出したサメについて教員達に追いかけられ、貴族の子息達は毎日のように挨拶に来る。
そんな私への利益0な学院生活を送っていた。
ちなみにだが、男の方のゴミは腕を治しておりひたすら剣の素振りをしている。
何度か私に絡もうと近づいてきたが、偶然近くに居た学長に採血されそうになってからは近寄ってこなくなった。
学長は決闘で使ったディカマン家の強力な魔法薬が効かなかった理由を調べたかったらしい。
そして例の女の方は半狂乱と言える瞳で貴族関係者に父の居場所を聞き回っていた。
おそらくイーウェル公爵が国王の命令で拘束され、公爵家自身の危うさにやっと焦っているんだろう。
王城で行われている公爵家、公爵領の取り扱いについての会議が終われば取り潰し、あの顔を学院で見ることも、あと少しで無くなる。
その件でも私は多くの貴族子息達に質問されており、正直ストレスが溜まりつつあった。
「ツカレタ……」
苦労しているのは私だけではなく、私のメイドであるミナにも決闘やクソ女の狂乱振りは影響していたようで、同じく学院に居るメイド達に色々と質問攻めにされているらしい。
「先に帰っているか?」
「イエ、ワタシはカリル様のメイドです。
先に帰ることなどあり得ません、カリル様の近くで支えるのが役目ですので。」
「そうか、なら共に行くぞ。」
いくら疲れていても外に出る時は完璧なメイドとなる。素晴らしい。
「一体どちらに向かわれるのですか?」
「大図書室だ。」
「図書室、ですか?」
「あぁ、少し調べ事をしなくちゃいけなくてな。
それに魔法薬だけ知識を深めたとしても貴族として最低限の学というものは必要だからな、暫くは通うことになる。」
国王からの依頼である学院での調査。
学院という限定的すぎる範囲なので弱体化の原因を知れる可能性は低いが調査をしたという事実は欲しい、ついでに私の得た知識を補強することもできる。
特に歴史に関しては多くが主人公視点の知識と現実に起きたことの差が激しいのだ。
つまりは正しい歴史をより詳しく調べる、これが主目的になる。
「流石はカリル様!では近道で──」
「こっちだ。」
「へ?」
面倒な人が近道にいることを察知した私はミナの手を引き、少し遠回りになる道へと進んだ。
「ど、どどどうしたんですか?」
「あの道を進めば面倒な事が起きたからな。」
学院で不用意に会ってはいけない人物3名、ゴミ2人と学長。
この3名に近づけば最後、ミドリスライムのように粘着質な奴等による面倒な質問攻めのオンパレード、間違いなく今日は図書室には辿り着けない。
「そうなのですね!」
「そうなんだ。」
〜大体1時間ほど〜
「着いたな。」
「そうですね〜、信じられないぐらい時間掛かりましたね。」
なんだアイツら、私の通ろうとする道を交代交代で塞ぐ使命でも受けているのかと問いたくなる。
おまけに見かけた学長は片手に魔法薬を持っていたし私の事を探していただろ、今日は1番会っちゃいけない。
「凄い本の数ですね、これは手分けした方がいいかもしれません。」
王国、いや世界中の知識が集まっていると言っても過言では無い学院の図書室、学院の名に恥じない書物の量だ。
「いや、今日は図書室の本の配置を覚え、気になった物をざっと調べるだけで、後日本格的に調べる。
ミナは自由に本を読むといい。」
「良いのですか?」
「あぁ、夕方に入り口で集合しよう。」
「かしこまりました!」
ミナには我慢を強いてしまっているし、少しでも自由に過ごせる時間をあげたい。
普通に休みをあげようとすれば、何故か私の近くで椅子に座ってるだけで、今回のような事情が無ければあまり離れることは無いのだ。
「さて……」
私も早速本を、といきたいが多少は整理されてはいるが大部分の本が整理されずバラバラに置かれているせいで、歴史についての本も何処にあるのか不明。
そもそも一般的に知られていない大罪についての本に関しては、大罪という名前が使われているかも怪しい。
それっぽいタイトルの本を片っ端から読むしか無い。
「料理法、魔物図鑑、林業、マリアベルの日記……
イライラするな。」
入り口から少し歩いて離れた棚から適当にタイトルを眺めているが、あまりの散らかり具合にイライラが止まらない。
というか日記に関しては他人に晒していい物じゃ無いからな、持ち帰れ。
「……いや、ある意味配置が汚すぎて滅多に人が来ない図書室置いておいた方が安全説があるな。」
「人の日記が沢山あったのって、そういう事だったの?」
「まぁ自らの書いた日記を読まれたく無ければ話だがな。」
「ふ〜ん、なら書かなければいいのに。」
……どうせ人が居ないと警戒心が薄くなっていたみたいだ。
「誰だ?」
「……?」
「貴方に聞いて……!」
そういえば主人公の革命を手伝う奴が1人、主人公と会う前はこの汚い図書室で過ごしていたんだったな。
「急に黙って、不思議な人。」
「私からすれば独り言に自然に混ざってくる君の方が不思議な人間だ。」
天才魔法使い、育てれば最終的に賢者となり対多数では無類の強さを誇る。
「クレナ・ブラン」
「ん……ん?名前教えたっけ?」
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