第122話 原作主人公は 1
──レオン視点──
「うっぁぁ……」
此処はベットの上、か?
身体が重く上手く動けない、確か俺は……
「レオン!目が覚めたのね!大丈夫?!」
「ノラ……」
幼い頃のことは覚えていない、俺が覚えている1番古い記憶はアランさんに暗い一室で拾われた記憶だ。
それから俺はアランさんに引き取られて、ノラとはまるで兄妹のように育ててもらった。
何故かボンヤリと過去の事が思い浮かんでくる。
物語を読むようにだんだん成長して、そのうち今の俺の姿になって……
『決闘だ』
そうだ。
「そうだ、負けた……」
「……レオン。」
カリル・ディカマン、俺の恩人であるアランさんを苦しめて、赤石病に苦しむ人達を見捨てた。
「俺は弱かった。」
「……!」
魔法薬を作る事しかできない貴族なら、アランさんが雇っていた騎士の人達に訓練を受けた俺でも倒せる筈だったんだ。
でも俺は決闘で負けた。
俺が勝っていればアイツから取った支援で苦しむ人が減っていたのに、負けたせいできっと今も苦しんでる。
だから、もう1度戦って勝って言う事を聞かせなくちゃいけない。
苦しんでる人のためにも、
「もう1回戦う。」
「ダメよレオン!そんなこと絶対にダメ!」
初めて見る必死な表情だ。
「悔しいけど、アイツは強いんだよ……
私の知る同年代で1番強かったレオンだって右腕を取られちゃっ出るんだよ?!それなのにまた挑むなんて……」
「ノラ……」
大切な家族であるノラに止められてしまった。
確かに今の俺ではアイツに勝てなかったし、右腕も失ってる、今から鍛えても勝てるようになるまでどれぐらい掛かるか……
「「……」」
──ザザッ──
コンコン
「あの、此処に決闘で怪我をした方がいると聞きまして、入ってもよろしいでしょうか?」
「あ、あぁいいぞ。」
「失礼します。」
ノラとの気まずい空気になっている部屋に誰かが尋ねてきた。
「聖女様だ……」
声的に女の子なのはわかっていたが、まさかあの有名な聖女だとは思わなかった。
「あっ、はい聖女です。一応……」
遠目には何度か見たことはあったが実際に話すのは初めて、聖女様は噂通りの謙虚な方みたいだ。
「取り敢えず自己紹介をさせていただきます。
私はノラ・イーウェルと申します、こちらはレオン、イーウェル公爵家で雇っている大切な方です。」
「これは丁寧にありがとうございます。私はセイクリード教、人平派の聖女ルリアと申します。」
流石に聖女であるルリアへは普通の対応じゃ不味いよな、俺でもは礼儀作法の類があまり得意じゃないしこの場はノラに任せるのが1番だ。
「それで、聖女様がいったい何のご用でしょうか?」
「えっとですね、そこにいらっしゃるレオンさんの腕を治療しにまいりました。」
「治るのですか?!」「治るのか?!」
突然の一言に思わず身を乗り出しルリアに近づく、片腕が無いせいでバランスが上手く取れなくて危うくベットから落ちるところだった。
「いや、あの……
実際はやってみないとわからないと言いますか、失った腕があれば確実に治せるのですが、無いとなるとかなり難しいので……」
「そうなのか……」
「あぅぅ、期待させてしまってごめんなさい……」
残念な気持ちにはなったが治療の為にルリアがわざわざ来てくれたのを考えれば、それだけで運が良かっただろう。
「で、では治療を「聖女様、忘れてしまうので先に金貨を要求しましょう。」うぅ、ごめんなさい、大金貨1枚と金貨50枚を先にいただかないと……」
「はい、実物は無いから手形だけど。」
「はやっ!」
普通の人達にポンと出せる金額じゃないのに、ノラは簡単に支払ってしまった。
いつかは返さないといけないし、将来は冒険者にでもなろうかな。
「……本物です、聖女様よろしくお願いします。」
「はぁぁ?!?!」
「はぇぇ、お金持ちだったのですね……」
ルリアは、私が渡すのが偽物な訳ないじゃない、と護衛にウガーと威嚇しているノラを、凄いなぁ、と呟きながら見つめていた。
なんとも気が抜ける空間に変わった。
「っと、始めますね。
【天に座す偉大なる主よ 下界に棲む我等が人間の声をお聞き下さい 彼の者の身体の傷をどうか直していただきたい リペアール】」
聖女様を中心に魔法陣が展開され部屋の中は神聖さを感じる光が満ちる。
「目がっ!」
一際眩い光を不意打ちで喰らいつつも、その光と魔法陣が消えた。
同時に右腕の感覚が帰ってくる。
「すげぇ。」
曲げたり軽く拳を振ってみるが違和感は全く感じず、完璧に治っている。
「ありがとうございま──!!」
「きゅう……疲れましたぁ、此処までの疲労感は初めてですぅ……」
「聖女様!大丈夫ですか?!
楽な姿勢を、椅子を持ってこい!」
聖女様の護衛達が慌しく動き、グッタリしている聖女様を椅子に座らせ水を飲ませている。
それよりも、息切れして立っていられない状態になるほど全力で魔法を使用してくれていたことに感動を覚えた。
アイツもルリアぐらい優しければ……
「あのルリア──」
「貴様!聖女様に向かってなんて口の聞き方を!!」
「わ、私は大丈夫ですから、それで何でしょうか?」
「腕を治してくれてありがとう。」
殺意のこもった視線で睨まれながらもルリアにお礼を言う。
「い、いえ……お役に立てたのなら、良かったです……」zzz
疲れ果てたのか眠ってしまったけど、何とか俺が言った御礼の言葉は届いたみたいだ。
「なぁ、ノラ。」
「なに?」
ルリアのおかげで俺はまた強くなれる。
「特訓に付き合ってくれ、俺がアイツに勝てるようになるまで。」
「……はぁ仕方ないか、わかった手伝ってあげる。」
「本当か?!」
「ただし!」
ノラは俺の顔を両手で押さえ目を合わせて続けた。
「2度と心配させないで……」
あぁ、もちろんだ。
次は絶対に負けない。
──治療終了──
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