第119話 決闘 前
学院のクラスでの自己紹介と親睦を深めるための時間という雑談タイムを終えると、決闘の時間はあっという間にやってきた。
私の所属クラスは貴族専用のクラス。
噂好きの貴族が多いのもあって私の決闘はすでに知られており、貴族としての挨拶の後は気を使ってか誰も話しかけて来ることは無く、準備を時間を割く事が出来た。
ちなみに元婚約者の女は貴族クラスでは無く、比較的優秀な者が多い平民のクラスに分けられていたのには笑いそうになった。
おそらく国王達の圧力で、貴族ならこれ以上ない屈辱だがクソ女は主人公と同じクラスだったし普通に楽しみながら過ごしていそうだ。
「ディカマン君、準備はいいかな?」
「えぇ、もちろんです。」
戦闘の準備は完璧。
ローブを纏い魔法使いのような装備と魔道具を身に付け、序盤に使う数種類の魔法薬は直ぐに取り出せるようローブの内ポッケにいれてある。
「それにしてもディカマン君が入学してくれてから知識欲が刺激されるような出来事が多くて嬉しいですよ。まだ2日だと言うのに最高です。」
「そうですか。」
試合前の待機室で話しかけてくる学長には隈ができており、私の渡した魔法薬を寝ずに解析していたのがわかる。
「それより1つ聞きたい事があるのですが。」
「なんでしょう?」
「観客を集めすぎでは?」
扉を開けて少し歩けば直ぐに会場に出られる待機室とはいえ、それなりにしっかり防音が施されているはずなのに外から大勢の話し声と楽器での演奏が聞こえていた。
「そうですかね?」
「この部屋に入る時に会場が少し見えましたが、騎士学科の大会用の会場でした。観客の数もかなり入る広い会場、1生徒同士の決闘でわざわざそこを使う必要があります?」
「君を馬鹿騒ぎしてる有象無象と同列に語るのはどうかと思いますが……」
研究が好きだとしても教育者が生徒を有象無象なんて言っていいのだろうか……
「決闘の証人ですよ。
勘ですがディカマン君の相手は面倒なので大勢用意したのですよ。」
「なるほど、納得です。」
手の内をあまり見られたくなかったが、確かにあの主人公に対して証人は多い方がいい。
となると、少し戦い方を変更するべきか?
コンコン
「でぃかまんコウシャク、ハジマルからカイジョウにいけ。」
???
決闘の時間を知らせた者の声は舌足らずでまだ幼い子供だった。
「こら
「メンゴ。」
「……コイツは教育しておきますので、頑張ってくださいね。
出来れば魔法薬を沢山使って戦ってください、それと魔法薬以外にも使い手の少ない魔法とか使えるのならそれもお願いします。」
「は、はぁわかりました。」
また色々と気になることが出来たが会場に向かう。
『『『おおぉぉぉ〜〜!!』』』
私が会場に足を踏み入れるのと同時に騎士を目指す厳つい男達の雄叫びと力強い楽器を叩く音に出迎えられた。
「ハハ……」
学院に所属する者全員が集まっているとしか思えない人数に魔法で作られた紙吹雪が舞う会場、あまりのお祭り具合に乾いた笑いが溢れてしまった。
ただの貴族と平民の決闘だぞ?
「ん?来たか。」
私が入った場所と正反対の場所から、これまた私のローブがメインの装備とは正反対の動き易さを重視した装備を着た主人公が現れた。
「逃げなかったみたいだな。」
「…………」
「何か言ったらどうだ。」
「…………」
前回のように無様な醜態を晒すことのないよう反省し、基本的に主人公との会話はまともに進行しないいので話さない、向こうのペース乱す、これが頭のおかしい主人公を相手にする上で大切なこと。
『予想以上に人が集まってしまいましたがカリル・ディカマン侯爵とレオンの決闘を行います。』
いつの間に移動したのか学長が会場の中心に立ち、アナウンスを始めた。
『お互いに何かありますか?』
「「…………」」
『……気合は十分そうなので早速始めます。
開始の合図は私が打ち上げた魔法が弾けた瞬間、是非とも自らの知恵や技術を披露していただきたい。
【
細かな制約の説明などしない。決闘はどちらかが意識を失うか降参するまで続く。
ピュ〜〜〜
「「…………」」
目の前に立つ主人公から睨まれている視線を感じつつも、いつ来ても良いように構える。
パン!
「「!!!」」
考えが腐ってても主人公、開始の合図とほぼ同時に駆け寄って来ている。なんらかの強化をしているだろうが、なかなかの速度だ。
奴のように剣を持っていない私は戦闘方法の特定が難しい。
ローブを来ているから純粋な近距離では無いのはわかるだろうが、魔法を使うのか、暗器を使うのか、はたまた大罪のような特殊技術、普通なら牽制しつつ様子を見るんだがな……
まずは小手調べ。
「……!」
身体が少し動きにくくなる霧を発生させる魔法薬を投げつける。
さて、避けるか割るか。
パリン!
「器用じゃないか。」
手に持った剣で投げつけた瓶を割られた。
発生した霧にはおどろいたものの、速度を落とさずに近づいてくる。
パリン! パリン!
2個、3個、と割られ次を投げる余裕は無く、次はあの剣が私に直接当たるだろう。
「これで!」
私を仕留められる喜びを隠しきれない表情で斬りかかってきた、この軌道と奴の腕力から考えて頬に傷つけた流れで首を両断しかねない危険な攻撃だ。
まぁ、
「なっ!……グッ!」
当たればの話だが。
その大振りの剣を最小限の動きで避け、バランスを崩したところに全力の蹴りは奴を会場の壁まで吹き飛ばした。
「研究にばかり没頭してる奴なら近づけば倒せると思ってたのか?」
『『『うぉぉぉぉぉ!!』』』
嫉妬の強化のおかげだ、魔法無しならあそこまで飛ばすことはできなかった。
「クッ!」
これで終わったら拍子抜けだったが、その心配は必要なかったみたいだな。
「ディカマン……!」
それにしてもその顔を自分を慕っている者に見せられるのか?
随分とまぁ、人に向ける表情とは思えない。
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