第109話 学長

本人は和かに話しているつもりだろうが、表情のせいで何かを企んでいるようにしか見えない。


「もっと君と話していたいところだけど、私は少し時間が無くてね……

実験の結果があと少しで出るからそれまで待ってくれ。」


実験してたのかそれなら、


「仕方ないですね、では外で待たせていただきます。」

「あぁ、そこの椅子に適当に座っていてくれ。」


良いわけないだろ。

本音と建前、敵対するのはほぼ確定しているが今の所攻撃できる正当な理由が無く、表面上だけでも友好的な関係を築かなくてはいけない。


「ここ薬品臭いですね。」

「そうか?」

「はい、ディカマン家の魔法薬師が失敗した時みたいな臭いがします。」


言われてみれば少し違和感を感じる、魔法薬師として臭いに気づかないのは致命的なんだがこれは意図的な物の気がする。


それはそれとしてミナ、学長に聞こえるからもっと小声で言おうか。


「それはこの部屋に撒かれてる睡眠薬の臭いですね

耐性がある者は臭い感じ取れない改造を施した睡眠薬だから、ディカマン君にはわからなかったんだろう。

そこのメイドちゃもは意識はハッキリしているし、それなりに耐性があるみたいだ。」


……防衛用と考えれば納得できる。

しかし、注意がなかったという事は私を試したのだろうか?


「でもそれって魔法薬作る時に混ざっちゃいませんか?」


ミナの質問は私も気になっていた質問だった。


「レベルは低いがいい質問だねメイドちゃん。」

「ミナです……」

「そうか、ではミナちゃんへ実験の結果を纏めているついでに、私の作ることが出来る魔法薬について教えてあげましょう。」


いつ結果が出たのかわからないが、学長はいつの間にか机の上に置いてあるノートに目に見えない速度で何かを記入していた。


「まずは私の作ることが出来る魔法薬からお教えします、身体能力を高めたり、魔力を高めたりできる強化系の魔法薬。

それと外では絶対に作らないが、ディカマン家の売り出している回復の魔法薬も再現できるね。」


回復用の魔法薬研究なんて教会にバレたら面倒な事になるのによくやるな。


「回復用の魔法薬を再現したのは好奇心で市場に参入しようなんて考えていないから安心してください。

それに教会は敵に回したくは無いので、改良したりあまり強力な物は作りませんよ。」


1番最下級の回復薬であれば作成方法はディカマン家外部の者でも意外と知っている者は居る。

だが大々的に売り出さないし、作れるなど周りに話したりはしない。

それは教会に潰されれてしまう可能性が高いから、ディカマン家が潰されない理由は国に所属し、それなりに長い歴史を持っているおかげだ。


これは私の予想も混じるが、魔法薬という大きく広がった技術を独占するのが不可能と考えた教会は、全ての独占は諦め1番神の力として相応しい回復系の薬のみを独占しようと動いている。


つまりは、魔法薬の中で傷を癒す薬が広がるのを防ごうとしており、学長の言った強化系などの魔法薬は作成しても問題無い。


「それでなのですが、この部屋で薬物関係の実験をする時は魔道具を使います。」


そう言って私に紙、ミナに綺麗な宝石を手渡した。


「ディカマン君はそこに書かれている文を暗記してほしい、無理そうなら記憶の魔道具を使っても構わないよ。

さて、魔道具の説明に移りましょうか。」


書かれている文は、知識の中で王女がする挨拶と全く同じだ。

かなり気合の入ったイラストと共に音声が流れていたが、本人が考えたわけでは無かったのか……


「この半透明の布のような物が見えますか?」

「見えます。」


「これは魔道具の効果で、魔力を高密度に纏めると眼に見えるようになる現象から着想を得て新たな技術として昇華させました。

これは厳密には宝石ではなく、結晶化した魔法なので基本的には使用者の魔力は起動時のみに使用します、作成の際に多量の魔力が必要になりますが……

あぁ、先に効果の説明をしなくてはいけませんでした、魔法の他に高密度にした魔力を内包しており起動と同時に──」


研究者の質問の隙を与えない解説に、魔法薬以外はほぼ初心者のミナの目が回り始めていた。



ーーーーー


挨拶の内容自体は直ぐに覚えられたのだが、火がついた学長はミナへと魔道具の説明を続けていた。

ミナの眼が段々と澱んでいくのがわかり、時間も時間ということで無理矢理止め、今は早歩きで会場へと向かっている。


「いやぁ、すまないね、つい夢中になってしまったよ。」

「イエ、ヨクワカリマシタ。」

「今度はもっとわかりやすく解説しましょう。」

「アリガトウゴザイマス。」


あぁ可哀想に、魔道具について語る学長の話についていける者なんて両手で数えられるぐらいしかいないだろうに、頑張って理解しようとしたんだろうな。


「さてとディカマン君、確認は大丈夫ですか?」

「はい、覚えるのは得意ですので。」


会場に人が集中しているからか、人の居ない無音の学院内を歩く。


「学長お願いがあるのですが。」

「どうしました?」

「挨拶の後に、壇上で少し話す時間を頂けないでしょうか?」

「構いませんよ。」

「ありがとうございます。」


知識で主人公陣営に回った貴族の跡取り達。

若さ故に流されやすい者達だ、軽く話して裏切りの可能性を少しでも減らさなければ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


色々と考えたのですが、作者は独学で書いているので基本的な書き方を知らないのと、今作はずっと「」と。を合わせて書いていたので2つを付けて書く事にします。


混乱させてしまい申し訳ありません。


それとアドバイスありがとうございました、次回作はなるべく意識して書いていこうと思います。


これからもノツノノをよろしくお願いします。



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