第108話 学院について

クレイ王都学院。


一般教育、騎士道、魔法薬学、経営学、魔法研究など、最先端の様々な学問を学べる世界でも有数の超エリート校。

王都と付いていることから分かるように王都に存在し、王国の貴族の子供達は学院への入学を義務付けられている。


建てられた歴史を振り返ると長くなるため簡潔に整理するが、クレイ王都学院は王国にあるため王国の影響力はそれなりに高いが王国が管理している訳ではない。


私の魔法薬などで最前線の技術を持つ貴族家の者は試験を無しで入学が可能だが、王国の貴族が試験に落ちることもしばしば。

過去には王族も落ちた事があり、取り潰す話が出たほどだが実行されることはなかった。


それもそのはず、王国にとって学院は様々な技術の結晶であり、所属している生徒の多くが王国の者のため大きな利益に繋がっている。


まぁ、その一方で不利益も被っている。

技術があり試験に合格すれば受け入れる性質上、友好国や中立国ならともかく敵対国の者が入学する事もそれなりにある。


学院で技術を得られている王国は学生となった者が敵対国の人間だったとしても手を出せない。

加えて試験関係を管理しているのは王国ではなく、学院を建てた賢き者と呼ばれた8人の性格を模倣した絵画であるため、王国は合格されれば受け入れるしかない。


そして学院があるのは王都、生徒は基本的に学院の寮で暮らす事になるが、休日などは王都に働きに出たり自由に散策する者が多いため、スパイにとって情報を得やすい環境になってしまっている。


唯一のデメリットが王国からみて学院の価値を大きく下げているのは間違いないが、王都から学院を移動させるのは技術が漏洩するため難しい。


学院自体を無くす事が出来ず、スパイ疑惑のある者も受け入れなければならない。

考えてみると、王国にとっては途轍もなく邪魔だな。


我々の代で潰すことを国王に相談するべきか真剣に考えておこう。


「流石ですカリル様、1番視線が集まってます。」

「そうだな。」


多少なりとも学院に憧れがあったのかミナのテンションがかなり高い、馬車の中じゃなければ落ち着けと諭しただろう。


「侯爵位への陞爵に、新しい魔法薬の開発、カリル様は今回の入学者の中でも1番話題になっているに違いありません!」

「そうだな。」


事実、ディカマン家の紋章が刻まれた馬車は多くの視線を受けている。そしてミナが少しだけ開けたカーテンから覗いてるのもバレているだろう。


そんなどうでもいい事はさておき、多くの視線は所々で知識欲が混ざってはいるものの概ね好意的な視線だ。


ミナの言う通り、今1番目立っているのは私かもしれない。

  

そんな私が学院の敷地内で、自らの技術を高め、新たな技術を学べる学院を邪魔だと考えているとは誰も予想できないだろう。


「あのカリル様、新入生の方と別の方向へ進んでるのですが、どちらに向かっているのですか?」

「現学長の元だ。」

「そうなんですね。

……え?」


入学式の際、今期の最も優秀な者が挨拶をする。

だが今では形骸化しており、優秀な者ではなく王国で最も立場の高い者が挨拶をする場に変わっており、その挨拶を今回は私が行うのだ。


「式の挨拶についての話、ついでに顔合わせだ。」

「挨拶をされるのですか?!」


そういえば色々と重なって言っていなかったな。

再び凄い凄いとテンションが上がるミナとそれなりに会話しながら、これから会う相手の事を思い浮かべる。


「学長というぐらいですし魔法薬学ではカリル様の知識に及ばないでしょうが、きっと凄く頭の良い人でしょうね。」

「どうだろうな。」


知識の中、原作での学長の立ち位置は主人公達の支援者だった。


ファン、簡単に言えば信徒のようなもので、英雄の子孫である主人公の事を気に入り活躍を見たいがために学院内でわざとハプニングを起こしたり、お詫びと称して学院の叡智の結晶である魔道具や魔法書を無料で提供する奴だ。


そんな彼はプレイヤーにはそれなりに人気があり、『なんで裏切らない?』と良く話題になっているサポート役だったが、私からすれば敵を強化する厄介者だ。

排除優先度はそれなりに高い。


コンコン


「お話中のところ失礼致します、カリル・ディカマン様、学長の研究室に到着致しました。」

「あぁ、直ぐに出よう。」


学長ともなれば専用の研究室まで用意されているが、普通なら応接室のような場所で話すと考えていたため直接研究室に入れるとは思わなかった。


警戒心が無いのか、それとも私が何かしても制圧する自信があるのか、理由はわからない。


「開いているよ〜。」

「失礼致します。」


研究室に足を踏み入れると待っていたのは糸目の胡散臭い男、この男こそがクレイ王都学院の学長。


「カリル・ディカマン君だね、ディカマン家の魔法薬の噂は耳にしている、この学校でも是非技術を昇華してほしい。

私もとある魔法薬を開発中でね、機会があれば共に語ろうじゃないか。」


声も胡散臭いな。


「っと、自己紹介が遅れた。

私はウィリアム・クレイ、まぁ本来の名はウィリアムだけなんだが学長になるとクレイも名乗らなくてはいけないんだ。」



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昨日更新しようとしたのですがカクヨムさんが混乱?してたので1日ずらしました。

次からは元に戻ります



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