第55話 考察
こんなに透けてる服でカリル様をイチコロ……?
あっ、
「そんなことダメです!」
「大丈夫、大丈夫。」
「それにカリル様は私なんかよりも綺麗な人の方が……」
「えっと、まぁいいや。
パーティーどうだった?」
友達がそう言って私の着替えがまだ途中の状態でベットに横になっちゃった。
理由は単純、日付が変わったから。
流石は王都の宿、そこそこ値が張る日付がわかる魔道具を全ての部屋に置いているんだ。
「正直、緊張しすぎて殆ど覚えてないんですよね〜。」
「違うよ!カリル様とはどうだったのって話!」
「何もないですよ?!」
私には何を言いたいのかイマイチわかりません、私とカリル様がそんな風になれる訳ないじゃないですか。
平民と貴族ですよ?
「もー、ミナは少し攻めることを考えた方がいいよ。
つまらないから寝る!おやすみ!」
「えぇ……おやすみなさい。」
布団を被り会話も途切れたので、透け透けから普通の服に着替えていると寝息が聞こえてきた。
……本当に寝たんだ。
「はぁ〜……
カリル様、カッコよかった。」
緊張していて殆ど覚えていないのは事実、でも覚えてないのは料理の味でどんな事をしていたかは普通に覚えてます。
カリル様が堂々とカッコよく王様達と話してたり、少し砕けた口調で凄い偉い人と話してたり……
まず王様達に気に入られないと出来ない事です。
王様が居た時のことは頭にモヤがかかったみたいで少し思い出しにくいのですが、王様達とカリル様が笑ってたので仲は良好なはず……
私が知る限りカリル様と王様は接点がほぼ無かったはずなのに短時間で笑う仲です、国の王様とですよ?やばいですね。
「そう!ヤバイのです!」
もちろん褒める意味で!
「カリル様の婚約者である奴は完全にやらかしましたし、きっと婚約は無くなります。
次はきっとカリル様を見て、支えてくれる素敵な人が婚約者になってくれるはずです。」
……はぁ。
ーーーーー
「もう朝か……」
宿に戻ってからソファで座りながらパーティー会場での出来事を思い返しながら過ごしていた。
朝日が昇り、自然な光で明るくなった部屋を見ると昨日の出来事は夢なんじゃないかと思ってしまう。
一夜で国の国王と宰相のトップ2人に友と呼ばれるまでになると誰が想像できるだろうか。
確かに大罪という共通点はあるが、知識でカリル・ディカマンと2人が親密な関係であった描写は無く、私は最悪の場合あの2人と敵対すると思っていた。
そのために魔法薬を作り、庇護下に入れてもらおうと全力で策をいくつも考えていたというのに……
「いや、終わった事を考えても仕方ない。
これからの事を考えなければ。」
現在私の抱えている問題は大きく3つ、
ノラ・イーウェルとの婚約、王都に来る直前様子のおかしかったマリア、そして原作。
その中の1つ、ノラ・イーウェルとの婚約は原作が始まると同時に解決するため取り敢えずは放置する。
解決しないといけないのは、マリアとあと1年もせずに始まる原作だ。
マリアは原作で主人公達が2年生になった時にとある貴族令嬢のメイドという身分で学院に入学してくる。
知識でのマリアはディカマン伯爵領で貧困の差を無くそうと、孤児院を筆頭に職を持たない者達へ食料や衣料品などの支援をしていた。
それはディカマン家からマリア自らの采配で動かせるだけの金額で行っていた。
だがいくらディカマン家の血が流れている者とはいえ当主では無いマリアでは動かせるのは僅か、原作のカリル・ディカマンがその僅かな額を許せずマリアの支援していた地区を傭兵を雇い蹂躙した事がキッカケで家出をする。
家出のタイミングは正確にはわからないが、原作が始まる前であると予想している。
「だが、それは少しおかしい。」
キッカケは今回のパーティーだったかもしれないが、そもそもカリル・ディカマンが明確に嫉妬伯爵になったとわかるタイミングは2年に上がってから。
それまでにもカリル・ディカマンから主人公に対して少なく無い嫌がらせはあった、それが2年に上がってから明らかに嫉妬の能力を使用している嫌がらせに変わるのだ。
つまりだ、
「マリアが動かせる程度の僅かな額の為に、嫉妬伯爵になっていないカリル・ディカマンがわざわざ傭兵を雇い蹂躙するだろうか?」
否、それはあり得ない。
支援を辞めさせたいならマリアの権限を取り上げれば良かったし、嫉妬伯爵になっていたカリル・ディカマンなら安くない対価を要求する傭兵を雇わないだろう。
ならばわざわざ傭兵を使った理由はなんなのだろうか。
「戻ってから調べ上げるしかないか。」
1つ予想するならば、表向きは公爵家と婚約を結び繁栄が約束されているディカマン伯爵家を陥れたい他の貴族家の仕業。
私はこれが1番可能性があると思っている。
コンコン
「なんだ。」
「ディカマン伯爵様、おはようございます。
朝食の用意が出来たとのことでご連絡に参りました。」
流石に時間かこれからまた少し長い旅路だ、朝食を食べなるべく早く伯爵邸に戻るか。
「案内をたの──」
扉を開けて朝食を食べに行こうと扉をノックした宿の職員に声を掛けようとし、立っていた者を見て言葉が止まった。
「やぁカリル、陛下からの手紙だ。」
手紙を差し出す姿勢で立っている宰相であった。
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