第45話 あれが……
ミナと共に始まるのを待っていると、城の中が騒がしくなってきた。
パーティーが始まる、主役である令息と令嬢以外の貴族家の関係者達が会場に入ったのだろう。
コンコン
「ディカマン伯爵様の案内を担当する者です、入室してもよろしいでしょうか。」
「構わない。」
「失礼致します。」
入ってきたメイドは歩き方ひとつ見ても立ち振る舞いが普通では無く、メイドというよりは暗殺者といった方が的確だ。
普通なら警戒するが、知識で王城に仕えている者は戦闘訓練を行なっていると知っていたため特に警戒はしない。
「入場のタイミングは、ディカマン伯爵家に合わせるので問題ありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ。」
この会の入場のタイミングは爵位が低い順、後半になっていくにつれて爵位が高くなっていき最後は王族で締められる。
今回の参加者は王子と王女、どちらも婚約者はいなかったが今回の件で御披露目になる可能性もある。
というか、なる。
知識の中で主人公の仲間になる2人、王女は婚約者は居ないが王子には婚約者が居た。
仲は比較的良好にらしいが、王子が拗らせて王になんかならない!って騒いでいるから少しぎこちない関係だった。
「流れの説明は必要でしょうか?」
「ミナに教えてあげてほしい。」
「かしこまりました。」
流れは簡単、指示と同時に会場に入ったあと王の居る場所まで歩き挨拶をして終了。
王城の中でも1番広い会場を使うため、歩いている最中に大勢の視線が集まる。
「移動ですが大勢の視線が集まりますがミナ様は堂々とディカマン伯爵様に合わせていれば特に問題はありません。」
「は、はい。」
「逆に言えばミナ様が挙動不審だとディカマン伯爵様に恥をかかせる事になりますので注意してください。」
このメイドはミナに優しい気がするな。
普通ならここまでアドバイスをする事はない、ミナが貴族令嬢なら失礼な態度を取ったとして王城で働けなくなる。
まぁ今回のパーティー参加者を全員暗記していて、ミナが貴族じゃ無いと知っているからアドバイスしてくれている可能性が高いだろう。
「あと5分ほどでディカマン伯爵様の番になります。
ご用意をお願いいたします。」
パーティーが始まって大体40分ほど、同年代の貴族が何人居るかわからないが長くても入場は1時間で終わるはず、私に取ってはその後が本番。
「時間ですね、行きましょう。」
ミナと共にメイドに先導されながら会場に向かう。
広い王城を歩いていると段々と騒がしい音が大きくなってきた。
「私はここまでとなります、このまま真っ直ぐ進んで突き当たりを右に曲がっていただくと会場に着きます。
扉の前に護衛の騎士が立っておりますのでわかりやすいかと思います。」
「わかった、感謝する。」
王城の廊下でミナと2人きり、騒がしい音が響いているはずなのに何故かお互いの呼吸音が聞こえた。
「はぁぁ、ふぅぅ……」
「……」
だんだん荒くなっていくミナの呼吸音が聞こえる、緊張しているのだろうか。
「ミナ。」
「だ、だい、大丈夫ですよ?」
突き当たりを曲がる前に一度立ち止まり、片手をミナの頬につけ目を合わせる。
「ヒュッ……」
「私が居る、大丈夫だ、落ち着け。」
「は、はい!」
「堂々と私の横を歩けばいい。」
「……!」
これで多分大丈夫だ。ミナの呼吸が整い、体の震えも収まっている。
再び歩き始め、角を曲がると騎士が2人立っているのが見えた。
「ディカマン伯爵様ですね?」
「そうだ。」
「あと少しで入場の合図があります、もうしばらくお待ちください。」
そのまま待機していると閉まっている扉から声が聞こえた。
「続きまして、この世界でも随一の魔法薬作成技術を持つ名家、ディカマン伯爵家。
カリル・ディカマン伯爵の入場です。」
扉が開くのと同時にミナと共に会場へと入る。拍手が響く中、大勢の視線が私達に集まった。
真っ直ぐ、堂々と国王が座る椅子に向かう。
豪華な椅子に座る国王、その左右には国王に特別な立場を与えられた貴族が立っている。
王国の主要都市の管理と監視を任されている
バリーニ侯爵家当主『ラリメル・バリーニ』
王国の経済関係の管理と改善を任されている
ローロフ侯爵家当主『スーザン・ローロフ』
国王の補佐を主に行なっている忠臣であり宰相の地位を与えられている
ヴァレーゼン公爵家当主
『ミゲアル・ヴァレーゼン』
この3名は普通の貴族とは違う、国王に認められ相応の地位を与えられた、この国でもトップクラスの権力を持つ者達だ。
「ディカマン伯爵家当主、カリル・ディカマン。
カリウス・ギヨーム・ヴェンガルテン陛下にご挨拶申し上げます。」
「これからも国のためにその力を使ってくれたまえ。」
国王の前で跪き、あらかじめ決められていた口上を述べ、国王の返事を待ってから立ち上がり横に抜ける。
「続きまして──」
次の者が呼ばれ私とミナから視線が外れる、1人を除いて。
「……」
その1人は宰相ミゲアル・ヴァレーゼン。
「続きまして──」
さらに次の者も呼ばれているのにも関わらず、宰相は私から目を逸らす気配がない。
「続きまして、長い間国に仕え支えている名家、イーウェル公爵家。
ノラ・イーウェル公爵令嬢の入場です。」
今後のために目を合わせてみようと思ったが気になる名前が聞こえてしまい視線を入り口へと向ける。
「あれが……」
公爵家にしては少し安っぽいドレスを着たノラ・イーウェルの隣には、同じく公爵家の人間のパートナーとは思えない安めな服装の赤髪の男が立っていた。
「主人公……」
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