第5話 収穫と調査
「閉じろ。」
止まっていた滝を再び動かす、嫉妬の神殿は将来的に私の研究室兼セーフハウスにする予定だからなるべくバレないようにしないといけない。
軽く身だしなみを整え屋敷に向かって歩き出す。
収穫は想像以上にあった。
知識に存在していた装備はもちろん、それ以外にも、見たことの無い植物、伝説の魔法薬の研究資料、現在の技術では創り出せない魔道具など、収穫は大量だ。
帰りながらも片手で持てる大きさの魔道具を調べる。
今持っているのは記憶にあるルービックキューブと呼ばれる玩具。
「…難しいな。」
あまり意味のある物とは思えないが、軽く動かしてみると意外と難しい。
記憶にあるような色で揃えるのではなく、模様で揃えなくてはいけないからか、とても難しい。
「……」
無心で模様を揃える。
「…やっと1面揃った。」
歩きながらルービックキューブをやること1時間半ぐらい、やっとの思いで1面を揃える事に成功。
だが、
「着いてしまった…」
気づけば屋敷に戻ってきていた。
なんと恐ろしい道具だ。
ルービックキューブ、これは封印しなくてはいけないな、熱中しすぎてやらなくちゃいけない事を放ってしまいそうだ。
「おや?予想以上に早いお戻りですね。
私は嬉しいのですがカリル様の御用事は済んだのですか?」
「そうだな。私も予想外の事があって早く帰る事ができた、魔封石は流石にまだ用意は出来ていないよな?」
「いえ、20個ほど確保は出来ております。
あまり一般的な物ではなく、数を集めるのはなかなか難しそうです。」
「なるほど、よくやってくれた。」
流石はボスコ、5日は掛かるかと思っていたがものの3時間程で入手するとは、かなり優秀だ。
「早速、公爵領で治療を行なっている伯爵家の者達へ送る準備を行っております。」
「ふむ。」
鎧を脱ぎ近くに控えていた使用人に渡す。
嫉妬の神殿から持ってきた装備があれば、私は赤石病には掛からないし一緒に行くべきか?
魔封石で治ればよし。
治らなければダンジョンの捜索を秘密裏に行い攻略を目指す、成功すれば伯爵が公爵家を救ったとアピールできる。
メリットは大きい。
だが仮にダンジョンを探すことになりダンジョンが見つからず滞在期間が延びれば、伯爵家が危機に陥る。
正直な話、公爵家がどうなろうと私はどうでもいい。
だが私のやりたい事である伯爵家の繁栄を達成するためには公爵領へと行き、公爵自身にどう思われようが周囲から見れば伯爵が公爵に恩を売ったと見える結果が欲しい。
それに嫌な事は先に片付けるに限る。
「ボスコ、そろそろマリアも領地経営に関わるべきだとは思わないか?」
「カリル様のお力により伯爵領は安定しておりますし、その事については私も賛成でございます。」
「では私のいない間は当主代理としてマリア・ディカマンを指名する。
そして私はこれから公爵領に行く。」
急な宣言に対してボスコは何も言わない。
おそらくは私が言うことを予想していたのだろう、やはりという表情になっている。
「妹を支え、伯爵家を守ってくれ。」
「かしこまりました。」
馬車の中でも魔道具を調べたいし、身の回りの世話をしてくれる何人か使用人を連れて行きたいが病が流行している公爵領へは行きたく無いだろうな。
それに信頼できる者は減らしたくない。
「準備はどれぐらいで終わる?」
「残り20分程かと。」
「では私は門の前で待っている。」
時間が惜しい。
ダンジョンの隠し部屋、王都にある秘宝、知識にあった魔法薬、やらねばいけない事は沢山あるのだから休んでいる時間など無い。
「アクセサリー系の魔道具だけで30近くあるよな…」
量は多いが嫉妬の神殿で手に入れた物は基本的に強力であり、全ての能力を把握するのは必須。
特にアクセサリー系は無効化や超強化などが付いている可能性が高い。
「は、伯爵様!」
「ご苦労、私も公爵領へと行く事になった。」
「ただちに伯爵様の馬車をご用意いたします!」
数人の使用人達が慌てて持ってきた馬車に乗り込み、アイテムBOXからアクセサリーを取り出す。
「身体強化…オートリジェネ…破壊耐性…」
目を瞑りアクセサリーに自らの魔力を込める事で能力が明らかになっていく。
1つの魔道具を調べるのに掛かる時間は通常なら5分ほどだが、嫉妬の神殿で手に入れた魔道具はその殆どが国宝級で1つ完全に調べるのに大量の魔力を消費するのに加えて30分は掛かるだろう。
わざわざ時間をかけてまで細かい能力まで調べるのには理由がある。
それは装備に何かしらのデメリットが存在している可能性があるからだ、これも通常なら殆ど問題ないんだが神殿産の強力な魔道具だとそうはいかないんだよな…
「全てを調べるのは時間がかかりそうだ…」
この作業は決して楽なものじゃない。
馬車が走り出す前に2個は終わらせたかったが、1個やっただけでこの疲労、魔力的には問題ないが体力的にもう一個は不可能だ。
コンコン
「誰だ。」
「メイドのミナでございます!」
疲れ切った私が呼吸を整えている最中、馬車の扉がノックされた。
外から聞こえた声は元気の良い若い女性の声だ。
「公爵領まで行かれるとのことで、ボスコ様より伯爵様に着いて行くようにと言われましたので私がご同行致します。」
「そうか…
入る事を許可する。」
恐る恐る馬車に乗ってくる。
椅子に座っていいか迷い、床に座ろうとしたため直ぐに椅子へ座る許可を出した。
「来てもらったところ悪いが私は少し休む。
それと私の合図を待つ必要はない、準備が完了次第出発しろ。」
少し早口でミナに伝えた私は気絶するように眠りに落ちた。
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