第2話
一時間目の授業が終わると共に、言也はボクの机に張り付いた。
「さあ、馴れ初めから聞こうか」
某碇〇ンドウのようなポーズをした友人に対し、ボクは初めて縁を切りたいと思った。
「オーケー。馴れ初め、とは」
「俺をGoog〇eか何かと勘違いしてらっしゃるか。ちなみにお前達の出会った場所と経緯、な」
言也は〇oogle先生だった……? と、冗談はさておき、馴れ初めねぇ。
「その……ここで言わないと……だめ、かな?」
「……流石に、野郎のその恥じらい方はキモイぞ」
「心無い言葉に傷ついた。黙秘権を行使する」
「すんませんでした。で、馴れ初めプリーズ」
何とも華麗な手のひらクルーをしながら時折後ろ……具体的には休み時間になって入ってきた他クラスの生徒を気にしながら言也は言う。朝から思ってたけど何か弱みでも握られてるの?
にしても馴れ初めねぇ……。
「あれはボクがバス待ちの人を話し相手にしてた頃――」
「ん?」
「――あの日は一人の女性が隣に座ってね。酷く落ち込んだ様子の彼女にボクはチョコ菓子を渡しながら言ったんだ。『人生は――」
「捏造じゃねーか! てかその展開どっかで聞いたことあるし続く台詞まで一字一句違わず言える自信があるぞ!?」
「では続きをどーぞ」
「人生は箱入りのチョコレート。食べるまで中身は――って違う違う話を逸らすな。事実を話せって」
「事実ねぇ……」
ノリの良い奴め(褒め言葉)。
しかし改めてそう聞かれると、どう答えるべきか悩む。
まずだけど付き合っているという事実がどこにもない。これからは分からないけど、今現在までの僅か16年程度の生涯において誰かとそこまで親密な仲になったことは一度としてない。まあ男女問わず仲いい人はいるけど……あー、一緒にいる場面を偶然目撃して、それが一人歩きした結果今の噂になった説ある? 誤爆って言われた件。
次いで誰と付き合ってるのか未だ知らない。近すぎて証拠の画像内容がよく見えなかったから。
とまあ現在、件の『彼女さん』について知ってることは殆どないのに、馴れ初めを考えないととはまた面倒な……。
「ならアレだね。週末に夜に公園のベンチで……」
「いやお前基本夜は外出ないだろ」
……よーお分かりで。
「……トハイッテモネー、ホントウニハズカシイカラネー」
「そこまで棒読みで言われて「お、それもそうだな」って返す奴いると思う?」
「いるかもしれないぜっ、ここに一人な!」
「ヒューッ……ところでそれゴラクのことだよな? 俺じゃないよな?」
「勿論言也、君のことだよ」
自分的に良い笑顔でサムズアップしてやれば「やらねぇよ!?」とノリのいいツッコミが。いやぁ打てば響くって最高に昂るね。ぶっちゃけ恋人とかよりこういう関係の方が個人的には心地よい気がする。
「というか馴れ初め聞いてどうするのさ。最新の性癖なの?」
「最新のトレンドみたいな感じで使うなってかそんな最新あるかっ」
「日本人はHENTAIだからね。仕方ないね」
「誇張表現はホモだぜ」
「つまりボクは女の子だった?」
「おい色々巻き込むな」
「ホモは嘘つきだからね仕方ないね」
「仕方なくねぇんだよなぁ」
いい感じに脱力したところで予鈴が鳴る。
うし、何とか乗り越えたぞい。取り敢えずだけど……
『今度奢りな』
『うぃ』
メッセージアプリを介して言也にそう伝えた。
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