第14話 戦後に向けて

西暦1946(昭和21)年2月13日 アメリカ合衆国 首都ワシントンDC


 この日、ホワイトハウスでは議論が行われていた。もちろん内容は、サクソニア共和国に対するものである。


「サクソニア共和国はすでにフィリピンの大半を支配下に置き、オランダ領インドシナやフランス領インドシナに対しても侵攻の気運を見せ始めています。マリアナ諸島方面でも、軽空母を中心とした襲撃部隊は敵航空戦力の反撃を受けており、損耗は日々拡大しております」


 報告を聞き、トルーマン大統領は大きくため息をつく。当初は圧倒的物量で容易く捻じ伏せられると思っていたサクソニア共和国は、自分達の数年先は進んでいる優秀な科学技術で生み出した兵器群により、量的不利を容易く覆していた。そして量に関しても、サクソニア軍は8個師団という大軍をフィリピン全土に展開しており、海上戦力と航空戦力もフィリピンとマリアナの二方面に戦線を拵えられるだけの規模を持っている。間違いなく自分達の慢心が生み出した結果であろう。


「…フィリピンから連中を追い出したい気持ちは山々だが、流石にそろそろこちらの財政的負担が無視できないものになってきている。軍は今後に関して、如何様に考えている?」


 トルーマンの問いに対し、最初に答えたのはロバート・P・パターソン陸軍長官であった。


「やはり、今後は東アジア、及び東南アジア諸国に対する軍事支援が中心となるでしょう。我が国はすでに日本と志那の沿岸部に進出を進めており、経済的復興が開始されております。マーシャル諸島でも地殻変動を理由とした陸地の増加現象が起きておりますし、サクソニア共和国に対する防衛戦略の強化も兼ねて開発計画を開始した方がよろしいでしょう」


 続けて、ジェームズ・フォレスタル海軍長官が口を開く。


「海軍も同様に、サクソニアの近隣諸国に対して大々的に軍事支援を行うべきでしょう。特にオランダとフランスは、インドシナにおける権益の保護のために、多数の艦艇を欲しています。ここで旧大陸の国々に恩を売っておいてもよろしいでしょう」


 その言葉に、トルーマンは頷いた。

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