第9話

 「……」

「フィン。貴男の主となるアリナ・モーラスですの。……院長から酷い事を受けてきたのでしょう?」

「……可哀想、なんて言うの……?」

お前も結局はアイツらと同じだ、とフィンは私を睨んだ。

「お嬢様に何という口の聞き方を…!」

「じいや。お止めなさい」

アイツら…誰かは知らないけれど、可哀想等同情の言葉を言われて来たのだろう。

そして、助けはしなかった。

「…フィン。ここにはもう、貴男に手を出す輩は居ませんわ。それに、ルーやローズも居ます」

「……ルー…ローズ……?」

僅かに顔を明るくしたフィン。

「入りなさい」

ギィ、と扉が開く。

「「フィン!」」

「ルー!ローズ!!」

ぎゅっ…!

3人が熱い抱擁を交わすのを見て、思わず涙が出てしまう。

(前世の私にも、守ってくれる人が居たらな…)

そんな、考えても仕方が無い妄想をし、ブンブンと首を振った。

「アリナ様…」

「はい、如何しましたの?」

フィンに名前を呼ばれ、そちらに目を向ける。

「さっきはごめんなさい…」

「環境が環境でしたもの、疑心暗鬼になるのも仕方無いですわ。それより、モーラス家に仕えませんか?勿論、給料は出しますし昇格もありますの。なにより、ルーやローズと離れ離れにならないですわ」

「アリナ様…!」

「どうです?」

「俺…働きます…!」

「えぇ、その答えを待っていましたわ。じいや!今からフィンの採寸及び制服を作りなさい!」

「御意」

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