第8話

 「ローズ!?」

「ルー…久しぶり……!」

控えめな性格のローズ。

活発な性格のルー。

紫髪のローズ。

金髪のルー。

どこまでも正反対な2人。

けれど、そんなことを気にしないかのように、2人は仲が良かった。

「アリナ様、俺達…もう1人引き取って欲しい奴が居るんです…!」

「あら、どなたですの?」

珍しい。ルーが引き取りを希望するなんて。

余程何かあるのかな?

「…その子は、フィンって言うんです。真っ白な髪や瞳で、院長からずっと、…」

気になる部分で言葉を切るローズ。

まさか、と嫌な予感がする。

「性的な悪戯を繰り返しされているんです」

嗚呼…

何と世界は無慈悲なのか。

「例えば?」

「えぇっと…毎晩院長の部屋に行って、帰ってくる時にはボロボロな位しか…知らなくて……」

ジワリ、と涙を目に溜めるローズ。

「…俺やローズで守ってたんです。けど…」

なるほどね。

私がローズやルーを引き取ったから、フィンを守る者が居ない訳か。

「安心なさい、2人共」

スッ…と2人の前で跪く。

そして、目線を2人に合わせる。

「このアリナ・モーラス。必ずや、フィンを助けてみせますわ」


 「院長殿、少し宜しいかしら」

「おや、アリナ王女。いかがなさいましたかな」

ヘラヘラと私に媚び諂うその姿に、ついイラッとしてしまう。

「私、フィンと言う少年を引き取りに来ましたの」

フィンを引き取りたい

そう言った途端、院長は眉間に皺を寄せた。

「いやはや…アレはアリナ様に相応しくありませぬ故……」

「あら、相応しいかは私が決める事ですの。何故院長殿がお決めになられるのかしら?」

クス、と扇で口元を隠し、ゆっくりと笑みを浮かべれば顔を真っ青にする院長。

「院長殿。貴男はフィンに何故そこまで拘るのです?」

カツン…カツン…カツン……。

院長の目の前でかがみ、耳元で囁いた。

「それとも…何かバレたく無い事でもあるのかしら?」

「……!?」

ぺたん、と腰を抜かす院長。

フィンの心情を考えれば、この位院長には我慢出来るでしょうに。

「フィンをここに連れて来なさい」

「は…はひ……」

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