第7話

 こうして無事仲直り(?)をし、私は再び国立孤児院に来ていた。

「アリナさん、ルーは元気?」

「えぇ、元気ですわ。あなたは?」

私にルーの事を聞いてきたのは、目が隠れる位前髪が長い男の子。

背丈はルーより少し高い位。

「ぼ…ぼくは、ローズ…」

女の子みたいでしょ、とローズは小さな声で呟いた。

「?ローズは薔薇を意味してるのでしょう?」

「う、うん…」

「薔薇の花言葉をご存知かしら」

「知らない…」

フルフルと首を横に振るローズ。

「ローズ。貴男は、まるで紫色の薔薇」

「え…?」

「紫色の薔薇。花言葉は、誇りや気品ですの。貴男にピッタリでしょう?」

そう、彼に言うと…ローズは悲しそうに目を伏せた。

「ぼく…そんな、相応しくないよ……」

何と弱々しい声なのか。

「何故そう思うのです?」

「だってぼく…孤児だもん…、院長が、お前らは欠陥品だから捨てられたんだ、って……」

「じいや。今すぐ院長を屋敷に」

「御意」

まだ成人していない、守られるべき存在が、大人の手によって、存在ごと否定される。

そんな、そんな酷い事を許していい筈が無い。

だって、前世の私もそうだったから……。


 「何でアンタは美雨ちゃんより不細工で出来損ないなんだろうね?」

前世、実母から言われた言葉。

美雨とは、実母と実母の担当ホストの子供である。

「アンタより何百倍も可愛い」

そりゃあそうだ、美雨は未だ4歳なのだから。

「美雨ちゃんが可哀相」

そうね。ホストと既婚者の子供と知ったら美雨、可哀相ね。

「美雨ちゃんを実子にしたかった」

なら産むなよ。

しんしんと降り積もる雪のように、不満は溜まっていった。

だから、美雨の事は好きになれなかった。


 「ローズ。貴男を引き取りますわ」

「………え?」

目を見開くローズ。

「良いかしら?」

「……はい!」

こうして、ローズはモーラス家に引き取られた。

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