第6話
カツカツカツとハイヒールの音が廊下に響く。
「ああ…ルーに申し訳無い事を……」
ごめんなさい、こんなエゴを押し付けて。
「アリナ様、顔色が悪いですよ?」
「ヨーリア、私…ルーに酷い事を……」
「え?」とヨーリアは呟いた。
キョトン、として彼女は言った。
「アリナ様がお決めになられた事、私は何も言えません。ですが…経験をして損は無いですよ」
ふふ、とヨーリアは微笑んだ。
ヨーリアは、スラム出身だ。
今まで盗みや無銭飲食をしていた彼女を、父上が買った。
買った…は語弊が生まれる。正しくは、ヨーリアの保護及び償い、である。
今まで己がしてきた事の重大さを気付かせる為に、大金を出し、ヨーリアを買ったのだ。
だからこそ、彼女の言葉は重い。
「それでは、失礼しますね」
「お嬢様、書類をお持ちしました」
「入りなさい」
「失礼致します」
入って来たのは、じいやだった。
隣には、ルーが立っている。
「アリナ、様…」
「……」
気まずい。
ふい、と思わず顔を逸らす。
「…お嬢様、ルーは反省しております故…」
「…………反省?」
何故ルーが反省?悪いのは私なのに??
「アリナ様、ごめんなさい…」
「謝らないで頂戴。私にも非はありますわ」
え、とルーは顔を上げた。
バチッ、と目が合う。
「私のエゴでルーを傷付かせた、これが事実。それ以外何も無いですわ。だから、ルー。貴男は謝らないで良いのですよ」
パァッ、と顔を明るくするルー。
ふ、と私の口角が緩んだ。
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