第3話

 次の日。私は、リュア国立孤児院に来ていた。

国立ともあってか、やけにデカく豪華だった。

「さぁて…誰を引き取りましょうか」

きっと、今の私は悪役ヴィランの顔をしているだろう。現に、子供達が怯えている。

「あら、アリナ様」

「…パール王女?何故ここに?」

「アリナ様こそ」

パール・フォーバー。リュア国の隣に位置する島国・ポー王国の王女。

「私は、新しい召使いを…アリナ様は?」

「私は手下を増やす為ですわ」

手下、と言う言葉にピクリと反応するパール王女。

「まぁ!子供達を手下にですって?!流石はアリナ様!他の貴族と大違いですわ!」

わざとらしい演技に、イラッとしてしまう。

ポー王国、滅亡させてやりましょうか……!

と、物騒な事を考えつつ顔には出さずに、パール王女は一人の子供を連れ、帰って行った。

「お姉さん、だーれ?」

「私はアリナ。アリナ・モーラスですの。貴方の名前を伺いしても宜しいかしら?」

子供達の目線に合わせる様にしゃがむと、皆顔を見合わせた。

「?どうしましたの?」

「…僕達、名前分からないの…産まれた時からずっとここで…施設で付けられた仮名ならあるけど…」

ああ、と私は納得した。だから皆、不安そうにこちらをチラチラと見るのか……。

「大丈夫ですわ。私の手下になって、悪い奴等を倒したら、あなた達の御両親も見付け出しますわ」

「…!」

「お姉さん、ほんと…?」

僅かに歓喜を顔に出した子供達。

えぇ、と力強く私は頷いた。

「私、嘘は絶対吐きませんの。信じて下さるなら、私のもとで働きませんか?勿論、賃金も出しますし…福利厚生も厚いですわ」

「フクリコーセー…?」

あっ、こちらの世界モア・アースだと福利厚生と云う言葉は無いんだった…!

「お休み…休暇や病気になった際の特別手当も出すと云う事ですわ!」

す、と手を差し伸べると…年長児であろう男の子が、手を掴んでくれた。

「俺…貴女に着いてく!」

「兄ちゃん…!」

「大丈夫、絶対お前らを迎えに来るから!」

「お兄様…」

ふむ、この子はこの孤児院の長兄的存在か。

「あなた、名前は?」

「ルー…ルー・ズンバ」

「ルー、今日から宜しく頼みますの!」


 「ここがルーの部屋になります。台所等の場所は、明日教えます。お嬢様に拾って貰えて幸運ですね」

「は、はい!」

「じいや、圧を掛けてはなりませんのよ??」

「これは失礼」

じいやったら、新人いびりだなんて…楽しいのかしら?

「それではじいや、ルーを頼みますわよ」

「御意」

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