第3話 天童京介
美久は学校に行っても1日中授業は上の空だった。
"私には何も出来ないよ"
いくら考えても良い案が浮かばない。
暗い気持ちで全ての授業が終わり、久しぶりに唯一入っている科学部の部室を覗いてみた。
クラスの女友達が2人と他のクラスの男子が1人いた。女友達は美久を見ると
「美久どうしたの?なんか今日元気ないじゃん」
美久「うーん、信じてもらえないと思うんだけど、、、」
と、昨日見た夢の一部始終を話した。
すると
女友達「なるほどね〜、それがマジで起こっても私達に出来ることないわ」
「高校生には無理よ」
「それに美久、あなたゲームのやり過ぎかもよ」
「また徹夜したんじゃない」
「まぁ、死ぬ時は死ぬしね」
全く真剣に取り合ってくれない。
美久は
「そうだよね〜、死ぬ時は死ぬし、どうしようもないし」
と半分諦めた表情で天井を見上げた。
「やっぱ私には無理だー」
と言うと女友達3人とたわいも無い話をしてその後アイスを買って食べながら帰宅した。
ーーーーー
次の日の朝、美久はモヤモヤした気持ちのまま学校に登校し、席に座って鞄から教科書を出していると昨日科学部にいた男子 天童京介が目の前に現れた。
京介はクールなステンレス縁の眼鏡をかけたインテリ風の男子生徒だ。身長は平均的だが成績はよく確か学年で5本の指に入る秀才とかなんとか、、、
よく見ると眼鏡を外したら美形の部類だ!と美久は思った。
いやいやなんの用?なんて思ってると
顔を美久に近づけ他の人に聞こえないくらい小さな声で耳元に囁いた
京介「鳴海、昨日話してた事について詳しく聞きたいんだ」
「今日、学校が終わったら家に来てくれないか」
美久は学校でのその大胆な京介の行動に心臓が飛び出るくらいドキドキして一瞬何を言われたのか分からなかったが
美久「う、うん、行く、行くよ、勿論OK」
と答えた。
ーーーーー
今日も1日美久は京介のことで頭がいっぱいになり授業は上の空だった。
"初めてあんな耳元で囁かれたわ"
とすっかり夢の話はどうでも良くなっている。
美久は京介からメールに来ている指示で学校の校門の前で待った。時間通りに京介は現れ、歩いて京介の家に向かう。
20分くらい数学の先生の広島弁について話をしながら歩くと京介の家が見えてきた。それは東板橋公園の近くにあった。凄まじい豪邸で門が高く家の屋根しか見えない。この辺りの5件分くらいの大きさだ。
「これ、天童君の家?凄いお金持ちなんだね」
京介「父さんはいろいろ事業やってるからね」
「あっ、下の名前で呼びあおうよ、京介って言って良いよ」
「皆んなそう呼んでるから」
美久「OK、分かった」
京介「まぁ入って、どうぞ美久」
門の前に来ると自動ドアが両サイドにスライドし庭を抜けて玄関に着いた。
美久はその優雅な佇まいに前髪を横に押さえてキョロキョロしっぱなしである。
京介が幾十にもなっている玄関の電子ロックを開けるとこの時代に珍しくきちんと品質の良い背広を着たお爺さんが立っていた。
「京介さま、お帰りなさいませ」
「爺、ただいま」
「こちらは鳴海美久さん、学校の科学部で一緒なんだ」
爺「いらっしゃいませ鳴海様」
「
「お部屋におられますよ」
「分かった。美久おいで、弟を紹介するよ」
いきなり同級生の家に来て弟の紹介?なんだなんだ?美久は訳が分からないが
「あ、はい」
とついていくしか無い。
2階に上がり幾つかある扉のひとつを開けると幼稚園生くらいの子供が絵を描いていた。
「お兄ちゃんお帰りなさい」
廉くんがお兄ちゃんに飛びついてくる。
髪はストレートヘアで利発そうな子供である。
来ている服も高そうだ。
「廉、この方は僕の学校の同級生、鳴海美久さん」
「廉は来年から小学1年生なんだ」
「美久です。宜しく」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんの彼女?」
いきなり何言うの!と思いつつ
「違うわよ〜」
「ただのし、り、あ、い」
と返していると
すると京介は、廉、お前が見た夢をこのお姉ちゃんに教えてあげられるか。
「うん、いいよ」
廉はまるで美久と話しを合わせたかのように全く同じ内容の話しをし始めた。日付も同じだし、マザーAIが犯人なのも一緒である。
美久は驚き口を開いたまま京介と顔を見合わせた。
京介「美久、僕はこの話信じるよ」
「廉には生まれた時から予知能力があるんだ」
「皆んなには絶対内緒だよ」
よく見ると廉くんの右の手の甲にユリのようなアザがある。
「このアザ私と同じだわ」
美久も制服のボタンを外して右肩を見せる。
京介「ユリの花言葉は純粋だ。君達きっと何かを伝えるために生まれてるんじゃない」
「そうだ、爺もう出てきたら」
すると、廉の部屋の壁紙がはらりと
美久は驚いて目が丸くなっている。
京介「爺は甲賀忍者の末裔なんだ。爺、僕達と一緒に日本を救ってくれないか」
美久「僕達って」
美久は"えっ?"と思ったが
爺「この鵜飼孫八、喜んでお受けいたします」
京介「爺は200歳超えてるんだけど、あの見た目が好きみたいなんだ」
「では、作戦会議と行こう」
美久は心強い味方の登場にテンションが上がりっぱなしだったが、ひとつだけ気になった。
廉の描いていた絵はたくさんの黒い核ミサイルが日本に向かって落ちて人々が重なって倒れている絵だった。
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