僕の欲しいもの《竜之介》

「ねえ、リュウ…もうすぐリュウの誕生日でしょ、なにか欲しいものある?プレゼントするよ」


夕食の後、ダイニングテーブルで食後の珈琲を飲みながら有栖が尋ねてくる。

「そっか、もうすぐか……うーん……今は特に欲しいものってないな……」

「……そうなの?」

有栖が残念そうに俯く。

栗毛色の緩やかに波打つ長い髪が、彼女の顔に淡い影を作った。


そんな表情されたら抱きしめたくなる……

「あ、でも」

と言いかけると、有栖がぱっと顔を上げる。

「……なに?」

「うーん……やっぱりいいや」

有栖が少し不満そうな顔をする。

本当に欲しいものは手に入らないんだから。 


いや、いいんだ。

有栖と過ごせるだけでじゅうぶんだ。

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