第四話:廃墟群

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 遊園地を抜け、海へ向かう。遠くに見えている島が私たちの目的地だ。

 海に足を踏み入れる。足は沈まない。踏みしめた感触はあのエレベーターと同じ、浮遊感にも似た柔らかさ。私たちは水面の上を歩いていく。

 雨に打たれる海から磯の香りがすることはない。これが海ではないからだ。この街は、うすぼんやりとした雨の匂いが染みついている。

 島が近づいてくる。コンクリートの建物がいくつも連なっているが、そこに人の営みは感じられない。灰色の朽ちた瓦礫がそれを物語っている。

 私たちは島に上がる。ここに来る観光客はほとんどいない。海を渡るという発想がないからだ。誰もいない廃墟群の中を私たちは歩く。

 観光用に舗装された道を一歩踏み外せば、そこは瓦礫の山だ。

 鉄筋コンクリートでできた集合住宅の壁面が崩れ落ちている。鉄から漏れ出した錆が雨を伝い、建物に広がる。コンクリートで固められたそこに、緑が宿ることはない。

 無機質な色と質感が支配する島は、どこか墓場のようで、私たちの会話は減っていく。

 かつて住居だったものは、雨に打たれ、崩れ落ち、もはや、鉄筋がむき出しになっている。それは滅びの具現であり、彼を思わせた。

 前を歩く彼のレインコートから、その指先が僅かに覗く。それは灰の色をしている。人の柔らかなそれとは違う、あまりに異様な姿だ。指先から、細かな粒が零れ落ち、その下の白い骨を感じさせた。

 松明の火は彼の願いを叶える。その代償に、彼の身体を焼いていく。最後はむき出しの白骨となるのだろう。

 あの時と同じように、私の心は乱れた。

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